● 16年03月14日 県議会報告

2016年3月14日 2月定例会予算特別委員会・山口律子議員答弁「マタニティハラスメントについて(大要)」



≪2016年予算特別委員会≫

2016年3月14日

 

マタニティハラスメントについて(大要)

 

山口律子委員 

 職場において、女性が妊娠、出産をきっかけに精神的、肉体的な嫌がらせを受けたり、不利益をこうむったりする、マタニティハラスメントについて伺います。

 一昨年、最高裁は初めてマタハラを違法と判断し、差し戻し判決で広島高裁は、原告の請求を認める逆転勝訴の判断を下しました。その後、厚労省は初めて大規模な調査を行い、結果も公開されました。妊娠、出産した派遣労働者の48%、正社員でも21%がマタハラを経験したことがあると答えました。マタハラを経験したと答えた人のうち、正社員などを含む20%が解雇されたと回答するなど、深刻な実態が示されています。そこで伺います。厚労省はマタハラに対する通達を出していますが、どのように対応することになっているでしょうか。

 

山口 労働局新雇用開発課長

  厚生労働省は、その内部機関である各都道府県の労働局長あてに、平成27年1月23日付で通達をだしております。

 この通達におきましては、妊娠・出産等にあたって、降格や解雇などの不利益な取り扱いを受けた場合は、原則として男女雇用機会均等法などが禁止する妊娠・出産等を「理由として」行われた不利益取扱いであるということが明確化されました。

 さらに、同法などの違反や職場の雇用管理に問題があると考えられる場合は、法に基づき積極的に事業主に対して報告を求め、または助言・指導、若しくは勧告を実施するよう、各労働局長に求めております。

 

山口律子委員 

 指導しても是正されない場合には、企業名を公表することになっていますね。

 

山口 労働局新雇用開発課長

 委員ご指摘のとおり、男女雇用機会均等法第30条で、勧告に従わなかったときは「その旨を公表することができる」とされております。

 

山口律子委員 

 国も、それだけ重視して、マタハラについて対策に乗り出していると思います。それでは、本県労働者支援事務所にはどのくらいの相談が寄せられていますか。また、その際の対応、斡旋件数、解決件数をお答えください。

 

古長 労働局労働政策課長

 県の労働者支援事務所では、男女雇用機会均等法などに基づく権限はございませんが、いわゆるマタニティ・ハラスメント、マタハラに関する相談を受けており、平成25年度は21件、26年度は44件、今年度は1月までの10ヶ月で17件寄せられてございます。

相談では、相談者のお話を十分お聞きしながら、妊娠・出産等を理由とする解雇や、減給、降格などの不利益な取り扱いは禁止されていることをわかりやすく説明し、自主的な解決に向けたアドバイスを行っております。また、必要に応じて、マタハラを所管する福岡労働局の雇用均等室を紹介し、解決促進を図っております。

なお、アドバイスを受けたご本人がどのように対応されたかなど結果の報告を求めておらず、解決件数は把握しておりません。

自主的な解決が困難と見込まれる場合、当事者である労使の間に立ち、解決を支援する「あっせん」を行っております。マタハラに関するものは、平成25~27年度までに1件ございました。このケースでは、会社に対して育児休暇制度の説明を行ったことにより、相談者の育児休業取得が申請どおり認められております。

 

山口律子委員 

 労働者支援事務所が、マタハラについても取り組んでおられることはわかっております。しかし、厚労省のアンケート結果に照らしても、相談件数、斡旋件数1件というのも、少ないのではないかと感じます。

 地元北九州で、マタハラの裁判を闘っている例がありますので、紹介したいと思います。北九州市に住む西原ゆかりさん、34歳は、介護の職場で働いていました。

 結婚して8年、なかなか子どもを授からず、あきらめていたところに待望の赤ちゃんを授かりました。すぐに職場の所長に報告したところ、所長から「妊婦として扱うつもりはない、子どもを抱えて働くリスクを背負えるのか、一生懸命働かなければやめてもらう、雇用の更新はありません」などといわれました。同時にパワハラもひどくなり、所長に話しかけても答えてもらえず、他のスタッフには新しい制服が支給されましたが、西原さんはもらえず、古い制服のままでした。医師からは、重量物の運搬や高いところのものの上げ下ろしなどは禁じられていましたが、入浴の介助や市営住宅の5階まで利用者を支えての階段の上り下り、車椅子や介護用歩行器を抱えての階段の上り下りなど、それまでと変わらない働き方で、切迫早産であることを告げられました。そして、「妊娠は悪いことなのか」と悩むようになり、仲のよかったスタッフからも無視され、精神的に追い込まれてうつ病と診断されたのです。こうした事例が実際に起こっております。県は権限を有していないから個別判断はできないとのことですが、私は、この事例は明らかに違法だと思います。福岡県内で起こっていることですから、ぜひとも、教訓を引き出し、マタハラ根絶に向けての対策を強化していただきたい。その立場から質問します。

 西原さんは、悩みを抱え、区役所や労働基準監督署に相談しましたが、解決できないままでした。そして、今裁判を闘っています。こうした中で、裁判を闘うのには、大変な勇気と気力、労力が必要です。国、県・市の窓口に相談されたら、相互に連携して、解決のために動くべきだと思います。労働行政を預かる県として、市や国との連携、情報交換はどうなっているのか、お尋ねします。

 

古長 労働局労働政策課長

  労働者支援事務所は、日ごろから労働基準監督署の職員等とお互いの支援状況などの情報交換を行っております。また、労働者支援事務所での労働相談において、法令違反が疑われる場合には、相談者に労働基準監督署や雇用均等室など指導権限を有する機関を紹介するなど、国と連携して問題解決を図っております。

 さらに、県内すべての市町村に対して、県の労働者支援事務所や国の労働相談窓口の周知を図るなど、県、国、市が連携して必要な支援が届くよう努めております。

 

山口律子委員

 必要な方に支援が届くよう努めているということですが、西原さんは、区役所に何度も行き、市長への手紙を書き、無料弁護士相談にも行き、労働基準監督署にも2回行っています。労基署は事業所に行くともいわれましたが、その結果は教えてもらえませんでした。県の労働者支援事務所はどこからも教えてもらえてなく相談していないといっています。これでは、必要な方に支援が届いているとはいえないのではないでしょうか。国・県・市のさらなる連携の強化が求められます。

 こうした問題が起こる大本には、事業所等の理解不足があると思います。マタハラ防止についての事業所への指導はどのように行っているのか、お尋ねします。国のパンフレットには、「マタハラは違法です」ときっちり書かれており、このパンフの普及など、もっと大規模に周知する必要を感じますが、いかがですか。

 

山口 労働局新雇用開発課長

 県では企業の理解を促進するため、福岡労働局との共催で、毎年、企業の人事担当者等を対象に、男女雇用機会均等法をはじめとする関係法令などの研修会を、県内4カ所で開催しております。

 今年度は、マタハラをテーマに開催し、200名近くの参加者があり、関心の高さを認識したところでございます。

 また、現在5300社を超える企業・事業所が登録している子育て応援宣言企業向けのホームページにおいても、マタハラに関する法制度の説明や不利益な取り扱いが禁止される具体的な事例等を掲載し、啓発に努めているところでございます。

 

山口律子委員

 取り組んでいるとのお答えなんですが、研修会や子育て応援宣言企業向けのホームページにおける啓発では足りないのではないでしょうか。子育て応援宣言していない企業への啓発が特に重要でしょうし、県民だれもが、マタハラはあってはならないという意識を持たなければ、根絶はできないと思います。ポスターやパンフなどを使った県民全体を視野に入れた啓発を強く要望します。

 西原さんは、裁判の結審で、「妊娠したからといってやめていくのは寂しいことだと思っています。妊娠したらやめていくという風潮しかなく、スタッフの入れ替わりが激しい状態では、利用者も離れてしまいます。私は、自分が働き続けることで、妊婦になっても働けるすばらしい職場だということを示したかったのです。一日も早く、職場に復帰したいと思っています。」と陳述されました。この思いを受け止め、マタハラ根絶に向けてしっかり取り組んでいただきたい。最後に部長の決意を伺います。

 

高橋 福祉労働部長

  妊娠・出産等を理由とする不利益扱いは、男女雇用機会均等法違反であることはもちろん、女性が希望をもって働くことを阻害するものであり、これらの問題で悩まれている方への支援や、企業に対する啓発は喫緊の課題であると認識しております。

 いわゆるマタニティーハラスメント、マタハラが発生しないためには、まずは企業に男女雇用機会均等法などの趣旨・目的を正しく理解していただくことが重要であります。このため、県では、先ほど課長が説明いたしましたとおり、企業に対する啓発や子育て応援宣言企業登録制度の推進により、マタハラが発生しない職場環境づくりに努めてまいりました。

 また、不幸にしてマタハラと思われる問題が発生した場合には、労働者支援事務所にいおける労働相談やあっせんにより、問題の解決を促しております。

 今後とも、国などの関係機関とも連携しながら、これらの支援によりマタハラ問題の解消に、県をあげてしっかりととり組んでまいります。

 

山口律子委員

 

 県民全体を視野に入れることを、重ねて要望しておきます。終わります。

 

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