● 16年10月25日 県議会報告

2016年10月25日 2016年決算特別委員会 高瀬菜穂子委員質疑・答弁 「所得税法第56条問題について」(大要)



高瀬菜穂子 委員

 日本共産党の高瀬菜穂子です。所得税法第56条について伺います。まず、56条とはどのような法律なのか、簡潔にご説明ください。

 

石橋浩一 税務課長

 所得税法第56条の規定でございますが、家族経営を行っているような事業主の方が、同一生計の配偶者その他の親族などの家族従業員に支払った給与を、事業所得の算定において、必要経費に算入しないことを定めた条文と承知しております。

 

高瀬菜穂子 委員

 つまり、所得税法第56条は 家族従業員の給与を必要経費と認めないというものです。所得税法56条のもとでは、妻の場合、事業専従者控除86万円のみ、その他の親族の場合は50万円の控除しか認めません。夫婦がいっしょに汗を流し、朝から晩まで働いている、その場合でも妻の働き分は認められず、年間の控除が86万円、最低賃金にも満たないものでおかしいじゃないか、見直すべきだと長い間運動が行われ、今、国会でも見直しの議論がされているところです。
 もともと記帳と記録保存を義務付けしている青色申告では、給与を必要経費として認めています。白色申告者についても1984年から記帳と記録保存が義務付けられたわけですが、それにもかかわらず、給与を必要経費として認める見直しは行われず、最低賃金にも満たない事業専従者控除の86万円のみであり、家族給与は認められないままになっているということですね。確認です。

 

石橋浩一 税務課長

 委員ご質問のとおり、昭和59年度の税制改正において、事業所得などの金額が300万円を超える事業主の方は、白色申告であっても記帳と記録保存が義務付けされております。
 なお、家族従業員の給与に関する規定につきましては従前どおりでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 そうなんでね。必死に働いているのに、給与を認めない、これは人格権の侵害ではないか、「国民は個人として尊重される」という憲法13条の精神にも反するのではないか、家族の正当な働き分を否定する税制は、憲法29条「財産権の保障」をも侵しているとも指摘されています。この所得税法第56条は、県税である個人事業税にも関係しています。
 そこで、県税である個人事業税について伺います。県内の納税者数をお答えください。

 

石橋浩一 税務課長

 平成27年度に課税をいたしました個人事業税の納税者総数は、31,787人でございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 31,787人というお答えです。個人事業者は、おおむね従業員5人以下の小規模企業と見ることができると思います。本県中小企業振興計画によると、小規模企業数は約12万事業所で、中小企業全体の83.6%を占めています。本県経済の中核となっているわけですが、12万事業所のうち、お答えの31,787事業所が納税し、あとの約9万事業所は、課税所得にも届かないほど零細な業者と見ることができるわけです。個人消費が落ち込む中で、小規模業者の経営は大変です。31,787人の中には、家族給与なしで納税している白色申告者がいることをしっかり受け止めていただきたいと思います。
 わたくしの近所の魚屋さんはご夫婦二人でそれこそ早朝の仕入れから夕方遅くまで商売をされています。「国民年金では生活できないから仕事はやめられない」と病気と高齢を押して頑張っており、地域の皆さんには大変喜ばれています。二人三脚で働いているのに、妻の給与は認められていません。
 父親と息子が一緒に塗装業を行っている方は、息子の給与が認められていないため、自立してローンを組むこともできないといいます。これでは自立することも、親の仕事を受け継ぐのが難しいと嘆いておられます。
 妻が病気をした際の保険会社の休業補償が、専従者控除86万円で計算され、一日2,300円しかなかったという報告もあります。主婦が5,700円保障されるのにおかしいじゃないか、ということなんです。
 地域を支え、経済を支えているのに、また、記帳と記録保存が義務付けられているのに、このような不利益は許されないと思います。
 そうした中で、業者の女性たちを中心に、長年所得税法56条の廃止運動が行われてきました。2月にジュネーブで開催された第63会期国連女子差別撤廃委員会は総括所見で日本政府に対し「家族経営における女性の労働を認めるよう所得税法の見直しを検討すること」と勧告し、昨年末に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」には、自営業者等の項目で女性の家族従業者としての役割が適切に評価されるよう税制の検討を提起しています。
 本年3月16日衆院財務金融委員会でわが党の宮本徹議員の質問に、大岡敏孝財務大臣政務官は、「検討には所得税法第56条が含まれる」と表明され、また麻生太郎財務大臣も「以前から所得税法第56条を見直すべきとのご指摘を受けているところでありますので、引き続き財務省において丁寧に検討していきたい」と答弁しています。
 全国では「所得税法第56条廃止等決議・意見書」採択自治体は2016年9月12日現在で、453自治体になりました。福岡県では22自治体、(9市13町)となっております。(九州・沖縄では、大分県、宮崎県、沖縄の3県、24市26町3村)ドイツ、フランス、アメリカなど、世界の主要国では「自家労賃を必要経費」と認め、家族従業者の人格・人権、労働を正当に評価しています。こうした動きについては承知されていますか。

 

石橋浩一 税務課長

 国等における動きや県内一部の自治体の議会において、所得税法56条の廃止に係る意見書等の提出を行っていることについては承知しています。

 

高瀬菜穂子 委員

 税制は、憲法に保障された人格権を侵すものであってはならないし、民主的に応能負担の原則で行われるべきものであると考えます。
 家族経営で働きづめに働いている小規模零細白色申告者に対して、給料を保障しない、人格をも否定するような税制を続けながら、大企業に対しては、研究開発減税、連結納税制度、欠損金の繰越控除制度など、優遇税制を行っています。
 所得税法第56条は、国においても見直しの検討がされており、県内事業者の多くが苦しんでいる問題でもあります。県としても、国に対し、所得税法第56条を廃止するよう求めるべきではないでしょうか。この点については、部長の答弁を求めます。

米澤朋通 総務部長

 県としては、国税である所得税について申し述べる立場にございませんが、個人事業税にも同様の規定がありますことから、国の検討状況を注視してまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 国税だから申し述べる立場にないとのことですが、利益が上がらないなかでの重税につながっているこの問題は、家族経営の繁栄や地域経済の振興を妨げるという観点からも大きな問題です。政府は、2010年に「中小企業憲章」を制定し、中小企業を「経済をけん引する力であり、社会の主役」と位置付けました。とりわけ、家族経営を「地域社会の安定をもたらす」と積極的に評価し、「小規模企業振興基本法」も制定されました。本県でも「中小企業振興条例」が制定されています。この立場からも、小規模零細業者を苦しめている56条廃止へ、本県からも声を上げていただくよう強く要望しまして質問を終わります。

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