● 16年10月27日 県議会報告

2016年10月27日 2016年決算特別委員会 高瀬菜穂子委員質疑・答弁 「TPPの本県農業に与える影響ついて」(大要)



≪2016年決算特別委員会≫

2016年10月27日

 

TPPの本県農業に与える影響ついて(大要)

 

高瀬菜穂子 委員

 

 日本共産党の高瀬菜穂子です。TPP、環太平洋連携協定の本県農業に与える影響について質問いたします。
昨日、衆院TPP特別委員会は、北海道と宮崎で地方公聴会を開きましたが、批判と懸念が噴出しました。TPP批准強行は許されないという声は、各界から出され広がっています。
 「福岡県の農業に関する指標」について、資料を要求しております。お取り計らいください。

 簡潔にご説明ください。

 

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坂井忠則 農林水産政策課長

 農林業センサスによりますと、平成27年において、総農家数は約5万3千戸、販売農家数は約3万5千戸、農業就業人口は約5万7千人と、20年前に比べ概ね半分程度となっております。
 農業就業者のうち、65歳以上の就業者は平成27年には、約3万4千人と全体の約60%、75歳以上の就業者は約1万6千人と全体の約29%となっております。
 また、後継者がいない販売農家は、平成27年には、約1万5千戸と、販売農家全体の約44%となっております。
 一方農業産出額は、国の統計によりますと平成27年データがありませんので26年の産出額になりますが、2,170億円と20年前に比べ20%弱の減少にとどまっております。
 新規就農者につきましては、県の調査で平成24年以降、4年連続で200人を超えて推移しています。

 

高瀬菜穂子 委員

  新規就農者が年間200人を超えており、農業産出額がほぼ維持していることは、さまざまな努力の成果であると評価するものです。しかし、一方で毎年農家数で2,000戸前後、農業就業者で3,000人前後の離農が進んでいることは、大変深刻だと思います。
 こういう状況下でTPPが発効されればどうなるか。農業者のみなさんの不安はこの間の国会での論議の中で、ますます大きくなっているのではないでしょうか。
 TPPの本県農業に与える影響を、県としてはどのように認識されますか。

 

坂井忠則 農林水産政策課長

  県では、国と同じ方法で国内対策を講じるという前提のもとに、産出額が公表されている83品目について検討を行い、このうち影響が懸念される17品目を対象に試算しております。
 その試算では、価格については、関税削減にともない一定程度低下し、生産量については維持されると見込んでおります。
 その結果、県農林水産物全体で約12億円から約20億円の生産額の減少が見込まれます。

 

高瀬菜穂子 委員

  いまのお答えは、本県が国の試算方法に準じてTPPによる影響試算を行った結果ですね。本県の農林水産物に与える影響額12億円から20億円はあまりに過少だと思いますが、それでも12億円以上の影響があるとなれば、減り続けている農家戸数、半数近く後継者がいない販売農家などへの負の影響は大きいと考えます。
 国に準じた本県試算で大問題なのが、コメの影響額です。国と同じくゼロで、まったく影響はないとしていますが、そうでしょうか。
 いま、国会でSBS米価偽装が大問題です。安倍政権は、TPP合意で新たに7.8万トンの外国産米を受け入れることを決定しましたが、「外国産米の輸入量が増えてもSBS方式で政府が一旦買い上げて事実上の関税をかける。国内農業には影響が及ばない」と説明をしてきました。しかし農水省の調査では、外国産米を輸入している商社の7割がいわゆる「調整金」と呼ばれる金銭のやりとりを認めております。政府の影響試算の前提が崩れたのではないですか。そうなると本県影響試算も根拠がないものと思われますが、いかがですか。

 

坂井忠則 農林水産政策課長

  国は、輸入米に関する調査の結果、民間事業者間の金銭のやり取りは、ある程度あったものの、それによってSBS米が国産米の価格に影響を与えているものではないことが確認できたことから、コメの影響試算をやり直す必要はないと判断しております。
このことから本県も同様に、コメの影響試算を見直す必要はないものと考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

  なんでも国のいう通りでは本県農業は守れないと思いますよ。本当に影響はないのか、国に対してモノを言うべきです。
政府の算出方法は、すべての農林水産物を対象とした包括的な試算になっていません。対象品目は関税率10%以上、かつ国内生産額で10億円以上の品目と限定的です。政府は「他の品目は影響が小さいから」と説明していますが、これに納得せず、独自試算を行った地方自治体の発表から政府の主張が過少であることは明らかです。
たとえば、
 北海道:たまねぎの影響額、2~3億円
 千葉県:落花生、影響額3.2億円、イモ類:3.2億円、野菜:2.3億円
 長野県:ブドウ3.84億円、レタス3.87億円
 和歌山県:かんきつ類35.7億円 など・・・
 試算対象外品目で影響額があることは、あきらかではないでしょうか。
 鈴木宣弘東大教授の試算によると、本県の主要農林水産物の生産減少額は310億円と本県試算の15倍から25倍となっております。そのうちコメは約30億円の減少です。
 「対策をするから影響はない」ではなく、リアルに影響を直視しなければ対策は出てきません。影響試算を見直す考えはありませんか。

 

坂井忠則 農林水産政策課長

 国の試算は、関税削減等の影響で価格低下が生じるものの、引き続き生産や農家所得を確保するため、国内対策をしっかり講じていくという国の決意を示したものと受け止めており、同じ方法で試算した本県農林水産物への影響試算は妥当なものと考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

  どう考えたら妥当だと言えるのですか。
 2013年の国会決議は、「農産物の重要5項目、米、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物は関税撤廃は認めない。除外又は再協議にする」としています。
 しかし、TPP協定案では、聖域とされる重要5項目のうち3割で関税が撤廃です。コメでも関税ゼロの特別輸入枠まで新設されました。わずかに残った関税も、発効7年後には撤廃に向けた協議を約束させられているではありませんか。無傷なものは一つもありません。明らかな国会決議違反です。
 政府は「農産物の2割はセーフガードや関税割当など『例外』を確保できた」と言っていますが、実効性はあるのでしょうか。
 セーフガードが設定されている農林水産物は何品目ですか。また、それらの品目については原則、関税削減期間中はセーフガードが確保されていると思いますが、最も長いもので何年ですか。また最も短いもので何年かお答えください。あわせて、最も生産額の減少が見込まれている牛肉についてもお答えください。

 

坂井忠則 農林水産政策課長

 セーフガードが設定されている農林水産物は、牛肉や豚肉など8品目です。
その期間は、チーズ製造の際に発生する副産物で脱脂粉乳の代替品として利用されるホエイが最も長く21年、オレンジが最も短い7年となっております。また、牛肉については16年となっております。

 

高瀬菜穂子 委員

  牛肉の16年目のセーフガードの発動は、輸入量がどれだけになった時ですか。その発動基準数量をお答えください。またその数量は、現在の国産牛肉と輸入牛肉を合わせた国内供給量の何割にあたりますか。

 

坂井忠則 農林水産政策課長

 牛肉の16年目のセーフガードの発動基準数量は73万8千トンです。
また、平成27年度の牛肉の国内供給量は82万トンであり、16年目のセーフガードの発動基準量73万8千トンは、その9割にあたります。

 

高瀬菜穂子 委員

  つまり、現在の国内供給量の国産が1割にまで落ち込まないとセーフガードは発動されないわけですね。輸入が9割、国産が1割になってセーフガードを発動して、どうやって畜産農家を守れますか。
 政府試算は実態を反映せず、重要5項目さえ全く守られていないのは明らかです。「国の専権だ、国の判断だ」と鵜呑みにしていては、本県の農業は守るどころか、崩壊の危機に陥ることになります。
 本議会で、全会一致で採択した意見書でも、TPP協定案を「衝撃的な市場開放水準の高さ」「国民生活の根本にかかわる極めて重大な政策転換」と指摘したうえで、国会での十分な審議を求めています。
 いまやるべきことは、再生産可能な米価を支え、しっかりと農家の所得を保障していくことです。競争力強化や大規模経営だけに偏った施策ではなく、家族経営を主体とした圧倒的多数の小規模農家も含めて、農家が安心して農業に打ち込める環境を整備し、自給率を高めることです。
 農地・農村は、単に食料生産にかかわらず、国土を保全する多面的機能も有していますが、先ほど紹介した鈴木教授の算定では、この機能の喪失額が福岡県で59億円と見込まれています。
 だいたい国はTPP交渉にかかわる内容について、黒塗りのままで情報公開さえまともにしていません。国に対し説明責任を果たすよう強く求めるべきではありませんか。これについては部長にお聞きします。

 

小寺 均 農林水産部長

  県では国に対し、TPP協定の具体的な影響などについて、農林漁業者の不安や懸念を払しょくするため、十分な情報提供と丁寧な説明を行うよう要請してきたところです。
 また、全国知事会や九州地方知事会を通じても、同様の要請をおこなっておりまして、引き続き国に対し働きかけてまいりたいと考えております。

 

 

高瀬菜穂子 委員

  ぜひ、つよく働きかけて、しっかりモノを言ってください。
 TPP協定が発効されると、農産物輸入が完全に自由化され、農林漁業と国民の食料に大打撃となります。さらに非関税障壁の撤廃の名のもと、食の安全、医療、金融、保険、官公需、公共事業の発注、労働など、国民生活のあらゆる分野で規制を取り払っていくもので、主権を売り渡し国のあり方を根底から変えていく危険な協定です。
 いま、TPPへの批判は、他のTPP参加国内でも広がり、アメリカの2人の大統領候補も反対しています。批准の見通しは全く立っていません。日本だけがTPP発効に向けて躍起になっています。
 わが党は、農業、くらし、主権を脅かす亡国の協定TPPに断固反対を表明するものです。
 この問題については、知事の認識を直接うかがいたいので知事保留をお願いします。

 

 

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