● 16年10月31日 県議会報告

2016年10月31日 2016年決算特別委員会 高瀬菜穂子委員質疑・答弁 「学力テスト・体力テストについて」(大要)



≪2016年決算特別委員会≫

2016年10月31日

 

学力テスト・体力テストについて(大要)

 

高瀬菜穂子 委員

 日本共産党の高瀬菜穂子です。いわゆる「学力テスト」「体力テスト」について伺います。まず、全国と県、市町村が行っている「学力調査」について資料をあらかじめ要求しています。委員長、お取り計らいをお願いします。(※資料国H23年分 国・県合計金額も入れてもらう)
簡潔にご説明をお願いします。

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相原康人 義務教育課長

 1枚目は、国における学寮調査と県に置ける学力調査の、契約業者と契約金額をまとめたものでございます。2枚目と3枚目は、市町村において行われている学力調査の実施状についてまとめたものでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 本県は、国が全国学力調査を行う前から独自に調査を行っていましたから、長い期間にわたって調査を行ってきたことになります。国の学力調査に要した費用は実に370億円にも上り、県も同じ10年間だけで約3億円費やしています。さらに、市町村も業者テストを行っており、まさに「業者テスト漬け」です。大量に個人情報を流出させたベネッセコーポレーションが小学校の全国調査を受注しつづけていることや、受注企業が学齢期の子どもに教材のDMを送るなど、公教育としてこれでいいのかというような問題がたくさん指摘される中で、続けられています。まず、お伺いしますが、「全国学力・学習状況調査」の目的は何ですか。また、本県の学力の実態と課題についてどのように認識されていますか。

 

相原康人 義務教育課長

 全国学力・学習状況調査は、教育の機会均等と教育水準の維持向上の観点から、児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策及び教育指導の改善に役立てるため実施されております。
 平成28年度の本県の結果は、小学校では3教科区分で全国平均以上となっており、中期的にも上昇傾向が継続しております。中学校ではすべての教科区分で全国平均を下回り、中期的にも変化が見られない状況にあり、改善が必要と認識しております。

 

高瀬菜穂子 委員

 学習状況の把握・分析であるならば、すでに10年も続けてきて、儒分にはできているのではありませんか。むしろ、テスト対策が弊害になっている、という現場の声を耳にします。県教委の今のお答えでも、全国平均より、上か下か、これが学力を測る指標となっていますよね。
 学校教育目標に平均点をあげることを掲げているところもあり、大変違和感を覚えます。そもそも文科省の実施要領では、「調査結果の取り扱いに関する配慮事項」として、「本調査で測定できるのは学力の特定の一部分であること、学校における教育活動の一側面に過ぎないことなどを踏まえるとともに、序列化や過度な競争につながらないよう十分配慮する」とされていますが、県教委として「学力の特定の一部分」だという認識はお持ちですか。そのことを学校現場に徹底していますか。

 

相原康人 義務教育課長

 国の実施要項にあるように、「全国学力・学習状況調査」により測定できるのは、「学力の特定の一部分」であることは認識しております。
 各学校に対しては、学力状況調査の数値データのみを重視するのではなく、児童生徒や学校に対する質問紙調査の回答状況と教科に関する調査結果をあわせて分析し、学習指導の改善等に役立てるように通知するとともに、管理職研修会等で指導の徹底を図っております。

 

高瀬菜穂子 委員

 徹底しているのであれば、学校目標に平均点向上をあげたりはしないのではないか、と思うわけです。県教委は「序列化や過度な競争」を抑制するためにどのような手立てをとっていますか。

 

相原康人 義務教育課長 

 「序列化や過度な競争」を抑制するために、県における調査結果の公表に当たっては、表示方法の工夫や改善方策の指示を行うなどの配慮を講じております。

 また、各市町村に対し、調査の趣旨・目的や調査結果の公表における配慮事項を周知するとともに、調査結果を分析・検証の上、域内の教育施策や各学校の児童生徒一人一人に対する教育指導の改善に向けた具体的な取り組みを計画的に実施するよう指導しております。

 

高瀬菜穂子 委員

  「公表について配慮」といわれましたが、学校通信などで全国平均、県平均、市町村平均より上か下か、など公表している学校はいくらでもあります。「1人1人に対する教育指導の改善に向けた取り組みを計画的に実施」といわれましたが、現場で行われているのは、過去問の繰り返しです。教室には、さまざまな子どもがいます。特別に支援の必要な子どもや理解するのに時間のかかる子どももいます。 ひたすら過去問をさせるのは1人1人に寄り添うのでなく、テスト対策の画一的な指導です。文科省が今年4月通知を出し、行き過ぎた過去問対策に警鐘を鳴らしました。本県では過去問対策の行き過ぎはないと考えておられるのでしょうか。

 

相原康人 義務教育課長

 本年度の文科省の通知については承知しておりますが、質の高い優れた過去問題を計画的に活用することにより、各学校や教師の教育指導の改善に生かすよう指導を行っており、過去問題の行き過ぎた取り扱いはないと考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 現場から聞き取った実態を紹介します。
 ある小学校の5年生は、7月実施の県学力診断テストを受けて、ポイントをあげるための取り組みを話し合い。2学期半ばに校長が5年生担任と少人数指導担当を招集。県・町の平均点を下回っていたため「早急に学力向上の取り組みをすすめること」を強く指導。朝の活動、家庭学習のプリントの内容を12月の「標準学力調査」の日まで日割りで計画。毎日国語、算数のプリントをさせるため、基礎基本の問題、過去問にあわせた活用力を育てる問題を作成。12月中旬の「標準学力調査」の結果を受け、さらに今後の取り組みをまとめ、春休みにも学習プリントを出し、6年生になって行われる「全国学力調査」に備えています。
 また、別の市では、5年生の12月、突然教育委員会から、過去問50ページ以上がネットで学校に送られてきました。1月の市のテスト対策のためです。全員分印刷するだけでも大変で、それを児童にさせるのはもっと大変、学テに関係のない図画工作、家庭科、学級会などが過去問の時間となり、それでも終わらず冬休みに大量のプリントを子どもたちに渡したといいます。担当学年も管理職も対策に追われ、授業をつぶす本末転倒におかしいと思いながらも、そうせざるをえなくなっている異常事態。さらに、その結果を踏まえ、教育委員会が6年生の全国学力調査前に、成績が悪かった子どもを数人取り出して、放課後などに個別指導をするよう校長に指導したとも聞きました。「こんな差別的なことはできない」と校長が頭を抱え、担当学年の教師が「もうダメ、競争だから」と絶望的に叫んだ。こんな現場の実態がわたくしのところに伝えられました。
 テスト対策中心ともおもわれるこのような実態について、県教委は望ましいと考えますか、行き過ぎと考えますか。

 

 

相原康人 義務教育課長

 学校において過度に競争が認識され、単に学力調査の数値データの上昇のみを目的とした、行き過ぎたテスト対策の授業等が行われるとすれば、本来の調査の趣旨・目的を損ない、不適切であると考えます。

 

高瀬菜穂子 委員 

 「不適切」ですよ。競争が止まらなくなっています。全国学テはさまざまな問題を引き起こしていますが、欧米においても顕著な弊害として指摘されているのが、カリキュラムがテスト準備教育に偏重していく点です。テスト対策に追われ、カリキュラムが硬直化する現象は、本県でも現れているのではないでしょうか。全国学テ結果というピンポイントの非常に限定的な評価が「学力」として独り歩きし国民に共有されることで、国民の学力観がゆがむことも指摘されています。テスト結果が子どもだけでなく、教師や学校を評価する指標となると、教育全体をゆがめます。2007年、東京都足立区で、障害を持った子どもをテストに欠席させる、テスト中教師が正解を誘導するといった不正行為が問題となり告発されました。本県でも、テスト当日、障害のある生徒が体調をこわしたら「帰ってゆっくり休みなさい」といい、一方テスト学力の高い生徒には「がんばって受けなさい」と指導する、こんなことが起こっており、居合わせた若い教師が罪悪感にさいなまれていました。不正とまではいわないかもしれないが、教育的でないことが点数競争体制の中で起こっています。
 本県は、深刻な教員不足になっていますが、早期退職したある教師が、「もう学校じゃないのよ。とにかく追いかけられて、子どもを追い込んでしまう。とても続けられない。」といった言葉も忘れられません。
 学力調査が始まって10年、地域の持つ課題、子どもの生活状況との関係なども分析されてきました。「平成28年度年度全国学力・学習状況調査の結果」の「都道府県の状況」では、「都道府県単位では、学力面においてほとんど差が見られない」「国語、算数・数学については下位県の成績が全国平均に近づく状況が見られ、学力の底上げが図られている」と分析されています。今後、児童生徒の学力・学習状況の実態把握には、悉皆ではなく抽出調査で十分ではないかと考えます。その分の予算を少人数学級や教師の増員、就学援助の充実などに使っていただきたいと思います。見解をお聞きします。

 

相原康人 義務教育課長

 学力調査を悉皆で行うことにより、市町村や学校はすべての児童生徒の学力実態を具体的に把握することができます。これを検証改善サイクルの基盤として活用することにより、当事者意識をもって、すべての市町村・学校において教育施策や日々の授業の改善等に的確につなげることができると考えております。
 県教育委員会としては、国において悉皆調査を継続することが適当であると考えます。

 

高瀬菜穂子 委員

 民主党政権時代には抽出で行われていましたし、東日本大震災の折には行われていません。学力テストを行わなかった学年が顕著に学力が落ちたということはないはずです。全国的に過去問競争、過度な競争を引き起こし、平均点病ともいえるような状況です。県教育委員会として、現場の声をよく聞き、検証を行い、学力テスト体制の見直しを国に求めていただきたい。このことを要望します。
 次に、「体力テスト」についてです。全学年悉皆で行われている「体力テスト」についても過度な競争で「行き過ぎではないか」との声があがっています。記録を上げるために放課後残して特訓をしているとか、記録が上がるまで何度もテストを繰り返すなどです。早朝練習、昼休みも練習・・・それに教師がついて指導しており、それを教育委員会が推奨したりしています。ただでさえ多忙だといわれている教育現場ですが、昼休みさえ取れないなどの声を聞いていますが、このテストはどのような目的で行っているのですか。記録にこだわり、平均点競争に陥ることは本末転倒と考えますが、県教委の見解を伺います。

 

寺崎雅巳 体育スポーツ健康課長

 体力テストを行う主な目的は、学校における体育・健康に関する指導の改善に役立てることでございます。
 各学校では、体力合計点平均値に、一喜一憂することなく、体力テスト結果を分析したうえで、体育・スポーツ活動において個に応じた指導方法の工夫改善に生かすことが重要でございます。
 また、児童生徒一人一人にとって、体力テストの記録を前年度と比較し、自身で体力の伸びや現状を把握することで、更なる運動への動機づけや運動習慣の定着を図ることができると考えます。

 

高瀬菜穂子 委員

 それであるならば、平均点競争に陥ることのないよう歯止めをかけていただきたいと思います。あまりにも記録にこだわっているため、「50メートル走を49メートルにするんじゃないか」と心配になるような実態があると聞きました。よろしくお願いします。
 最後に、教育長に伺います。これまで述べてまいりましたように、本県では、学力テスト、体力テストをめぐって、残念ながら、過度な競争、不適切な取り組みが行われていると思うわけです。平均点競争に教育委員会も含めて振り回されている。これは子どもたちにとっては不幸なことではないでしょうか。国連の子どもの権利委員会が「日本の子どもたちは過度の競争によるストレスで、成長がゆがめられている」と3回にわたって厳しく指摘していますが、学校現場はさらに競争が強まっているのです。学力テスト、体力テストにおける過度な競争をやめさせること、悉皆による学力テスト体制の見直しについて、見解を伺います。

 

城戸秀明 教育長

 学力や体力、豊かな心は、これから自己の人生を切り拓いていく児童生徒にとって、社会的な自立の基盤となるものでございます。
学力調査や体力テストの結果を上げることが、本県教育の最終目標ではございません。しかし、結果を上げることは、児童生徒の将来や本県の教育に対する県民の信頼を得るために、必要なことであると考えております。
 児童生徒は、本来、学ぶ意欲、向上心やチャレンジ精神を持っているものであり、適度な競争心をもち、お互いが切磋琢磨し自らの能力を高めていくことが重要であると考えます。
 県教育委員会としては、今後とも学校、家庭、地域といっそう連携し、子どもをほめて鍛えて伸ばす「鍛ほめ福岡メソッド」を導入した教育活動を全県的に展開して、学力や体力をはじめ児童生徒の資質や能力を高めて参りたいと考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

  「ほめて鍛えて伸ばす」ことは大切なことだと思います。基礎学力をつけることも重要です。そして、そのためには一定の繰り返し練習必要です。しかし、その余裕をなくさせているのが、学力テスト中心の過度の競争です。本当に学力をつけるというのなら、一人ひとりによりそえる少人数学級などの教育条件整備こそ優先されるべきです。学力テスト体制の見直しを改めて強く求め、質問を終わります。

 

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