● 16年11月01日 県議会報告

2016年11月1日 2016年決算特別委員会・総括質疑 高瀬菜穂子委員質疑・答弁 「公契約条例の必要性について」(大要)



≪2016年決算特別委員会≫
2016年11月1日

公契約条例の必要性について(大要)

高瀬菜穂子 委員

 日本共産党の高瀬菜穂子です。通告に従い公契約条例の必要性についてお尋ねします。
 公契約条例は、おおやけ(公)が発注する事業で働く労働者の賃金を保証することや、受注をめぐる著しい低価格競争に歯止めをかけ、事業の質を確保することを契約者に求める条例のことです。
 2014年9月、千葉県銚子市のパートの学校給食調理員、母ひとり子ひとりの家庭で、県営住宅家賃を滞納し強制退去の期日の24日に、母親が中学2年の娘さんを殺害、自分も死のうとして死に切れなかったという痛ましい事件がありました。パートの時給は850円、月給は4万~8万円だったそうですが、春夏冬休みの時期は仕事が休みとなるため、収入が著しく落ち込んでおり、ヤミ金融から重ねて借金もしていました。事件を起こした日は、夏休みが明けた直後で、預金残高は1,963円しかなかったと報道されています。いわゆる「官製ワーキングプア」の問題としてメディアに大きく取り上げられました。先日発表された総務省の「地方公務員の臨時非常勤職員に関する実態調査」によりますと、その数は全国で64万人。前回4年前の調査から4万5千人増えています。こうした臨時・非常勤職員の中で「ワーキングプア」といえる働き方が増えており、告発されています。長崎県では、6年半の間同じ職場で同じ仕事をしていたのに、県と外郭団体の2つが2ヶ月ごとに雇い止めにして67回も雇用主が変わり、社会保険に入れなかったという事案が起こり裁判になりました。都道府県で多い臨時教職員処遇も、正規に比して低賃金で、埼玉県で生活保護が適用された例もあります。
 「官製ワーキングプア」は本来あってはならないと考えます。県の臨時・非常勤職員について、その果たす役割はどのように認識していますか。また、その報酬・賃金の処遇状況についてもお答えください 。

 

徳永吉之 人事課長

 県行政の推進にあたっては、本来、正規職員により必要な人員を確保することが原則と考えております。
 しかし、年度の中途で出産、育児や病気等により職員が急務する場合等には、臨時職員を任用し、非常勤職員については専門的な知識や経験、資格を必要とする消費生活相談員などに任用しているところでございます。
 臨時、非常勤職員については正規職員と同様、県民福祉の向上のため、県政の一翼を担っており、重要な役割を担っているものと認識しております。
 また、臨時、非常勤職員の報酬・賃金については、類似職種の正規職員若しくは民間事業の従事者との均衡を考慮して設定し、適切に支給しているところでございます。

 

後藤和孝 市町村支援課長

 市町村における臨時・非常勤職員の報酬・賃金につきましては、各団体において職務の内容や正規職員との均衡などを考慮して定められております。

 

高瀬菜穂子 委員

 はい、100点満点のご答弁ですが、果たして本当に本県の公務労働者の賃金や身分保障は適正でしょうか。たとえば、私が6月議会で取り上げました学校現場で働く常勤講師が産休を取れず、事実上やめさせられている問題が本県にもありました。また、本県の教職員が非常勤も含めて定数ぎりぎり(これは全国42位なんですけど)で、しかもその定数さえ割り込んでいる現状の中で、市町村も独自採用を行っています。その契約は実に劣悪ですよ。人事院規則違反ではないか、と疑われるものがあります。そのいちいちについて今回問題にしませんが、申し上げたいのは、公で働く労働者の賃金と身分を適正に保障するためにも「公契約条例」が必要だということです。
 次に、公共事業を担う建設労働者の賃金についてです。
 本県の建設労働者に対する設計労務単価はこの4年間で5227円、34.0%も引きあげられました。しかし、技能労働者への適切な賃金水準の確保にはつながっていません。12,000人が加入する福岡県建設労働組合(福建労)が、2016年6月に取り組んだ「賃金実態調査」によりますと、平均日当は大工で14,830円、各職種で14,186円。全職種の平均額は14,379円であり、4年間でわずかに700円程度の増加にとどまっています。民間の低賃金構造を打開するうえでも、公共部門の責任は重大であり、その見地から国土交通省は本年1月30日に公共工事設計労務単価を連続して引き上げました。本県も通知文書を発していますが、その内容は「努力義務」にとどまっており、現場では自己負担経費約7,000円を差し引くと、生計費が満足に捻出できないという現状が今も広く存在します。
 技能労働者の確保・育成のためには、適切な水準の賃金の支払いが重要であることは明白です。福岡県建設労働組合は、各種法令に照らしても、月22日働いて年間600万円の賃金が保証されることが、技能労働者の維持・再生産に不可欠であると提言しています。実際の現場では、下請けが何重にもなる「重層下請構造」となっている状況があります。そのために、労務費へのしわ寄せなどの問題が発生しています。
本年1月に国土交通省が出した通知「技能労働者への適切な賃金水準の確保について」には、「発注者として、受注者に法定福利費相当額の適切な支払いの指導や支払い状況の確認をするとともに、新労務単価の上昇を踏まえた適切な水準の賃金の支払いを指導するなどの特段のご配慮をお願いいたします。」とあります。これを、受けて県としては、どのような対応を行っていますか。

 

清水 修 契約室長

 本年1月に国から都道府県に通知があり、適切な価格での契約や技能労働者への適切な水準の賃金の支払い等を促進することが要請されています。
 県としても、建設工事の担い手である技能労働者を確保・育成していくためには、適切な水準の賃金の支払いが重要と考えております。
このため、受注業者に対し下請け契約を行う際には、適切な価格での契約の締結と設計労務単価の引き上げを踏まえた下請け業者による適切な水準の賃金の支払いを受注業者に要請しております。
 さらに、建設業団体に対しても意見交換会や総会など、様々な機会をとらえて同様の要請をしております。

 

高瀬菜穂子 委員

 通知を踏まえた契約になっているか、元請にたずねたことがありますか。

 

清水 修 契約室長

 尋ねたことはございません。

 

高瀬菜穂子 委員

 同趣旨の通知は何年ぐらい出しているのですか。

 

清水 修 契約室長

 昨年1月に国から同様の通知が来ておりまして、受注業者に対し同趣旨の通知は少なくとも昨年1月以降出しております。

 

高瀬菜穂子 委員

 通知を出し続けても、下請けの単価はほとんど変わっていないと労働者から告発があっています。労働者の賃金把握を県として行うべきではありませんか。

 

清水 修 契約室長

 技能労働者の賃金実態の把握については、国が設計労務単価を改定するために全国の公共工事従事者の賃金実態を調査しております。
この調査には、毎年県が発注した工事も含まれることから、県の賃金実態も反映されているものと考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 1年前にわが会派の山口議員が同じ問題を取り上げましたが、判で押したように同じご回答です。県は通知を出すだけで、通知の中身がどう受け止められ、どう実行されているかについては直接調査しようとしませんね。どうしてですか。

 

清水 修 契約室長

 労務単価の改定は、国が全国の公共工事従事者の賃金実態を調査しており、 この調査には、毎年県が発注した工事も含まれることから、県の賃金実態も反映しております。

 

高瀬菜穂子 委員

 やる気になればできるのではないかと私は思います。
 中小企業庁が今年初めて、取引上立場の弱い恐れのある中小企業、小規模事業者、いわゆる3次、4次下請け等の事業者にヒアリング調査を行いました。わが党の真島省三衆議院議員の質問に、「毎年書面調査・立ち入り調査を行ってきたが、下請け事業者の中には、取引への影響を心配して、不当な状況を申し出ることは難しいといった事案があったのではないか。秘密保持を前提に、職員を直接中小企業の方々に派遣して、書面調査では把握できない厳しい取引条件に直面している実態を改めて認識しました」と答えています。こうした国の取り組みにも学び、現場の生の声を聞き、新単価を反映した賃金水準にするよう、発注者である県が動くべきだと考えます。公契約条例はその根拠となります。
公契約条例は全国23自治体に広がっています。そのなかで、賃金下限額を定めているのが、野田市、我孫子市、東京都渋谷・足立・千代田・世田谷の4区、多摩市、国分寺市、川崎市、相模原市、厚木市、三木市、高知市、直方市の14自治体です。たとえば本県直方市の場合、1時間あたり852円という労務報酬下限額を設定し、普通作業員の下限額は1,730円などとしています。労務報酬下限額が条例によって決まれば、県としてそれが守られているか調査を行うことが可能になると思います。県が発注する公共工事等の「適正な賃金水準」を確保するため労働報酬下限額を規定する条項を持つ公契約条例の制定についての考えをお示しください。

 

古長秀明 労働政策課

 公契約条例の制定についてでございますが、本来、賃金などの労働条件は労使間で自主決定されるものでございます。
 労働条件の最低基準を定める最低賃金法や労働基準法などの法令との関係整理、とりわけ最低賃金の遵守を条例で求めることの意義、最低賃金を上回る金額での賃金条項を制定する場合には、その基準はどこに置くべきかなど、慎重に検討すべき課題がございます。
このため、他の自治体の取り組みについて情報収集を行いながら、引き続き研究を進めてまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 「技能労働者への適切な賃金水準の確保」を行政として通知も出しているんですよね。ところが、それが現場労働者には繁栄されていない、と声があがっている。それならば、適切に労務単価が反映されているか県として調査を行うべきでしょう。ところが調査は行わない、条例を作れといっても進まない、「研究を進めている」というがその内容は見えません。私は、条例を作ることで公契約を適正に行うという県の姿勢を示す、このことが重要だと思います。直方市でお話を伺いましたが、その折に、経営者、労働者、行政が契約や賃金の保障の効果について共通認識をもって話をしていることが地域の発展にとっても重要だと感じました。実効性のある公契約条例を制定していただくことを強く求め、質問を終わります。

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