● 18年10月01日 県議会報告

2018年10 月1日 2018年決算特別委員会 高瀬菜穂子委員質疑・答弁「介護保険制度と地域包括ケアシステムについて」 (大要)



《2018年決算特別委員会》

2018年10月1日   

 

 

 

介護保険制度と地域包括ケアシステムについて(大要)

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

日本共産党の高瀬菜穂子でございます。介護保険と地域包括ケアシステムについて伺います。まず、①介護保険料の推移②所得段階別第1号被保険者数③居宅サービスの利用率④本県の介護予防・日常生活支援総合事業の実施市町村数の資料をお願いしておりますので、委員長、お取りはからいをお願いいたします。

 

まず、介護保険料の推移ですけれども、介護保険料は、2000年の導入時の平均が3,050円でしたけれども、2018年からの第7期は約6,000円と2倍に跳ね上がっています。とりわけ広域連合のAグループは8,048円と全国でもトップレベルの高さです。保険料に苦しむ高齢者が多く、「介護保険をやめたい」との相談まで受けることがあります。所得段階別の被保険者数を見ますと、「世帯の市町村民税非課税」の第1段階から第3段階。第1段階は生活保護受給者で、第3段階までは、世帯の住民税が非課税ですけれども、この低所得者層が全体の40%を占めています。保険料の推移と世帯非課税の低所得者が40%にも上るということについて、県の認識をお伺いします。

 

小林功 介護保険課長

 

はじめに、介護保険料の推移についてでございますが、高齢化の進展により、介護サービスの利用者数は、現在、制度開始時の約3倍に増加しております。これに伴い、介護給付費が増加し、保険料も上がっていると考えております。

次に、所得が低い市町村民税非課税世帯の方の数が約4割であることについてですが、高齢者のいる世帯は過半数が単独世帯または夫婦のみ世帯であり、高齢者の主な所得は、年金や恩給となっております。

このため、低所得の市町村民非課税世帯の方が多くなっていると考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

保険料の基準額は第5段階なっていますけれども、この段階でも本人は非課税という世帯が多いんですね。非課税ということなんですね。第1段階から第5段階までの本人の非課税の方、世帯が非課税の方、実に全体の65%を占めており、改めて本県高齢者の厳しい生活実態を見る思いです。本来非課税の方から保険料を取るべきではないと思います。ドイツは所得の2%にしている、だから所得ゼロの人はゼロ。日本の介護保険制度では、所得ゼロ、住民税非課税の方からも年金天引きするという容赦ないやり方です。そうした中で、利用にも影響が出ているのではないかと推察します。3つ目の資料、居宅サービスにおいて、支給限度額に占める利用実績が2割から7割弱に留まっていますが、居宅サービスの利用率の実態については、どのように見ておられるでしょうか。

 

小林功 介護保険課長

 

居宅サービスの支給限度基準額に対する利用率の状況についてですが、支給限度基準額は、保険給付の上限額であり、必ずしも上限額まで利用することが想定されているものではございません。

本県の利用率の状況は、要介護者本人の状態や希望、家族の状況等を踏まえながら、必要なサービスが選択されているものと考えておりまして、全国の利用率と大きな差はないところでございます。

また、要支援者の利用率が低くなっておりますのは、平成26年の介護保険法の改正により、介護予防訪問介護と介護予防通所介護が市町村の地域支援事業に移行したことによるものと考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

「必要なサービスが選択されている」というふうに言われましたけれども、実際にはお金がなくてサービスを控えているそういう実態があります。先日も、病気で働けなくなった方が、要介護3の母親と暮らしていて、年金月額75,000円、そこから家賃も保険料も払っている。サービスは勧められても利用料が払えないから受けられない、入浴サービスだけは自分でできないから受けている、とのことでした。そうした利用抑制は広く存在しているのではないでしょうか。

特に、保険料については負担の限度を超えていると思います。厚労省は、2025年に基準額が7,200円になると予測していますが、広域連合Aグループは既に8,000円を超えています。さらに基準額が上がれば、その負担には到底耐えられないのが本県の実態だと考えます。後期高齢者医療の場合、年金収入80万円以下は9割軽減となっており、それに比べ、介護保険の低所得者の負担は極めて大きいといわなければなりません。国に対して、低所得者の保険料や利用料負担をこれ以上引き上げないための財政措置、とりわけ軽減措置の拡充を行うよう強く要求すべきだと考えます。県の見解をお聞かせください。

 

小林功 介護保険課長

 

 介護保険制度においては、所得段階に応じて、保険料や利用者負担上限額が設定されるなど、低所得者に対する様々な軽減措置が、国によって実施されております。

 しかしながら、すでに保険料の上昇のように低所得の方の負担は大きくなっており、今後、高齢化の進展に伴う介護サービス利用者数の増加によりまして、保険料や利用者負担がさらに増えることが考えられますので、低所得の方も安心して介護保険を利用できるようにする必要があると考えております。

 このため、県としましては、県独自に、また他の都道府県と連携しまして、全国知事会や全国主要都道府県民生主管部(局)長連絡協議会を通じて、低所得者の保険料や利用者負担の軽減措置の拡充につきまして、国に要望をしているところでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 さまざまな機会に低所得者の保険料、利用料の負担の軽減措置、拡充について要望を押していただいているということですので、今後もしっかりやっていただきたいというふうに思います。

次に、「地域包括ケアシステム」について伺います。政府は2025年を目途に「要介護状態となっても住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、住まい、医療、介護・予防生活支援が一体的に提供される体制」を各市町村で構築すると説明しています。その構築のカギを握るのが、「地域包括支援センター」だと考えます。先ほど資料が、田辺委員の資料要求で提出されましたけれども、その設置状況を見ますと自治体に1か所というところが多く驚いています。本気で地域包括ケアを行おうと思えば、中学校区に1か所、できれば歩いて行ける小学校区に1か所必要ではないかと考えます。てんてこ舞いの地域包括支援センターの体制強化とともに、その設置数を増やすことが求められると思いますが、見解を伺います。

 

成松宏 高齢者地域包括ケア推進課長

 

県内の市町村が設置する地域包括支援センターは着実に増加しており、平成25年4月に149か所であったものが本年9月1日現在、201か所となり、この5年間で52か所増えております。県といたしましては、その設置を促すため、市町村に対しセンターの運営に要する経費について財政支援を行っております。

また、センターの機能強化を図ることが重要でありますので、市町村や地域包括支援センターの職員を対象に、地域包括ケアシステムの構築や地域ケア会議などに関する研修を実施してるところでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 

「地域包括」といっていますけれども、その拠点がないのでは進んでいかないというふうに思いますので、地域包括支援センターの体制強化、しっかりと進めていただきたいと思います。

政府は「地域包括ケアシステム」推進の第一歩として、要支援1~2の「軽度者」の総合事業(市町村が事業主体)への移行を位置づけました。総合事業は2015年度(平成27年度)から始まり、2017年度(平成29年)2017年4月からすべての市町村で実施されています。その実態について資料を提出していただきました。制度の趣旨も合わせて、簡潔にご説明をお願いします。

 

成松宏 高齢者地域包括ケア推進課長

 

 資料は、本県の介護予防・日常生活支援総合事業の実施市町村数でございます。介護予防・日常生活支援総合事業は平成26年の介護保険法、改正により制度化されたところでございます。その主旨は、市町村が中心となって地域の実情に応じて住民と多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することで、地域の支え合い体制づくりを推進し、要支援者等の方に対する効果的、効率的な支援等を可能とすることを目指すものでございます。事業の実施にあたりましては、既存の介護事業者による、既存サービスに加えNPO、民間企業、ボランティアなど地域の多様な主体を活用することとされております。この表は、各市町村が介護予防・日常生活支援総合事業として提供する、要支援高齢者向けの訪問型サービスと通所型サービスについて、サービスの内容ごとに市町村の実施状況をまとめたものでございます。訪問型サービス、通所型サービスとも介護施設事業所において提供するサービスでございます従来相当はすべての市町村で実施されておりますが、住民主体の活動である「サービスB」を実施している市町村は、訪問型サービス、通所型サービスとともに9市町村となっております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

今説明のありましたように住民主体による「サービスB」は、この数字が物語ってい

るように未実施のところが多いわけですよね。

住民と直接接し、かつ地域の実態を把握している市町村からみれば、この住民主体、ボランティアを中心としたサービスというのは実現不可能というふうに判断しているのではないでしょうか。県としてこの現状をどう見ておられるか見解を伺います。

 

成松宏 高齢者地域包括ケア推進課長

 

平成27年度から、市町村は、介護予防・日常生活自立支援総合事業を順次実施することとされて以降、住民主体の活動であります「サービスB」を実施する市町村は少しずつ増えておりますが、現在9市町にとどまっております。

それぞれの地域で住民主体の活動を始めるためには、地域住民のニーズの把握、関係者間の情報の共有、担い手の養成、運営方法の検討など、行う必要があり、各市町村にこれらの業務を担う人材を確保することが課題と考えております。

このため、県では、平成27年度から、これらを担う「生活支援コーディネーター」の養成を行い、市町村への配置を促しているところであり、今年度からは、市町村に配置されたコーディネーターに対し、住民主体の活動の推進方法などを学ぶフォローアップのための研修を実施しているところでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 

そうは言いましても、「サービスB」の実施が少ないことは、その困難さを物語っていると思います。総合事業自体、報酬が少ない中で経営が厳しく、実施継続に困難があるとも聞いております。人材確保の取組みは大切ですが、ボランティアを中心としたサービス提供にはなかなか無理があるというふうに思います。

私達は、高齢者が住み慣れた地域で、必要な医療や介護のサービスを受けていくためには在宅医療を提供する医療施設や介護事業施設が不可欠であり、専門的サービスが提供されることを前提にそれを補完するものとして地域住民の自主的な生活支援があって住み慣れた地元が終の住処として可能となると思っております。この点について県の見解を伺います。

 

成松宏 高齢者地域包括ケア推進課長

 

 医療や介護が必要になっても、可能な限り住み慣れた地域で生活することができるようにするためには、「医療」「介護」「予防」といった専門的サービスと、「住まい」「生活支援」といったサービスが相互に関係し、連携していくことが重要であると考えております。

 そして、こうした幅広い分野をカバーするためには、本人や家族による「自助」のほか、地域住民の支え合い活動やボランティアなどの「互助」、介護保険や医療保険による専門的なサービスなどの「共助」、さらには、公費による福祉事業などの「公助」、これらをバランスよく組み合わせることが必要であると考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

バランスよくと言われましたけれども、国の考え方は、総合事業に象徴されるように、専門職が行っていたサービスを地域住民主体に移そうとするものであります。昨年の社会福祉法改定では、社会福祉法人に「公益的取り組み」の義務付けまで行いました。施設等の職員は「地域活動」への参加を迫られることになります。政府が進める「我が事・丸ごと」は誰も否定できない「助け合い」や共生を掲げることで、地域住民や社会福祉法人による互助を地域福祉の制度に組み込み、行政の穴埋めを求めるものです。公的財源の保障もなく、「慈善的」な事業に肩代わりさせることは、新たな矛盾を生み、制度後退につながることを指摘しておきます。

 

さて、地域包括ケアシステムの推進のためには「住まい」の重要性を国も強調しています。私が住む小倉南区UR徳力団地は、世帯数2400の大きな団地です。先日、この中心に診療所と特別養護老人ホームが一体となった「メディカル&ケアとくりき」がオープンしました。特養ホームは1か月で満床となり、長年この地で、かかりつけ医として信頼されている診療所の医師は、往診や自宅での看取りも行って住民に安心をもたらしています。団地内にはデイサービスを行う事業所があり、周辺にも介護施設が充実しています。団地自治会では、高齢者相談会や体操、歩こう会、映画を見る会など多彩な活動で、高齢者見守りを自主的に行っており、県知事表彰も受けました。地域包括支援センターと協力し、必要な介護を提供する体制に努めています。こうした体制は「地域包括ケアシステム」の目指す一つの方向、モデルになるものと考えますが、いかがでしょうか。

 

成松宏 高齢者地域包括ケア推進課長

 

 ただ今お伺いしました徳力団地における取り組みは、医療・介護サービスの一体的な提供、地域住民による自主的な見守り活動など、地域の関係者の皆様が、連携して活動される事例であると思います。関係者の皆様からその具体的な取組み内容についてお聞きしたいと考えているところでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 

ぜひ聞いていただきたいと思います。

こうした取り組みを広げていくことが重要ではないかと考えます。国、県、市町村が係わっている公営住宅団地はその条件があります。公的な土地を無償もしくは格安で提供し、必要な医療や介護の施設を設置し、住宅団地は住居として高齢者が住みやすい低額な家賃とし、住居の改修などを行うことで、現在ある資源を活用して「地域包括ケアシステム」をすすめていけるのではないでしょうか。その点では縦割りではなく、医療・介護・住宅、その他高齢者を取り巻く問題について関係部局が連携して進めていただきたいと考えますが、保健医療介護部としての見解を伺います。

 

成松宏 高齢者地域包括ケア推進課長

 

 高齢者を取り巻く課題は、「医療」や「介護」のほか、高齢者が安心して生活できる「住まいの確保」、自動車の運転ができなくなった高齢者の方の生活を支えるための「公共交通機関等の移動手段の確保」や「商店街が行う宅配サービスなどの買い物支援」など多岐にわたっております。

 このため、地域包括ケアシステムの構築を目指すことを定めた「高齢者保健福祉計画」を策定する際には、住宅担当部局をはじめ、交通や商工の担当部局をメンバーとする会議を設置し、関係部局の連携を図っているところでございます。

 また、計画の進捗管理につきましても、関係部局と連携して行っているところであり、今後も、他部局と連携しながら、高齢者保健福祉計画に掲げる施策を推進していきたいと考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 関係各部が連携して、必要な医療介護サービスを提供できる体制をつくっていただきたいというふうに思います。介護保険については、申し上げましたように今でも負担が大きいわけですけれども、国は、今年の利用料の3割負担導入に加え、要介護1,2を保険から外すことも検討しており、そうなれば「国家的詐欺だ」と制度を作った厚労省の関係者が言うほどなんですね。地域医療構想では、1日8万人以上の在宅医療が見込まれていますが、その受け皿は見えません。今後地域の力を引き出していくためにも、必要な医療介護の確保が重要であることを重ねて強調し、質問を終わります。

 ありがとうございました。

 

以上

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