● 21年10月08日 県議会報告

2021年10月8日 2021年決算特別委員会 高瀬菜穂子委員質疑・答弁 「盛り土」について (大要)



 

<2021年決算特別委員会>

      2021年10月8日

 

「盛り土」について(大要)

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 日本共産党の高瀬菜穂子でございます。本日は、「盛り土」について質問いたします。7月3日に発生した静岡県熱海市の土石流被害事故は死者・行方不明者27人の大惨事となりました。「違法盛り土」が大雨で崩落し、土石流となって一気に流れたというふうにいわれています。違法な盛り土を中止・是正できなかった行政の責任が問われています。

 国交省によると、建設残土は毎年2億900万㎥(東京ドーム230個分)も発生しており、盛り土被害は各地で発生しているにも関わらず、これを規制する国の仕組みがありません。条例で一定の規制をしているものの、自治体によって規制は異なっています。 

 本県にも土砂埋め立て条例がありますが、本県の条例はどのような内容ですしょうか。またどのような課題があると考えておられますか、お答えください。

 

池田芳和 農林水産部 農山漁村振興課長

 

 「福岡県土砂埋立て等による災害の発生の防止に関する条例」は、事業者が、盛り土や土砂埋立てを行い、その土地の面積が3千㎡を超える場合に、知事の許可を受けるよう規定しております。

 許可にあたっては、事業者から提出された盛り土の高さ、調整池や水路などの防災施設の設置といった、災害の発生を防止する措置の内容が適切かどうか、現地調査も行い、審査しております。

 次に、課題についてですが、無許可で盛り土を行う事業者がいることが課題であります。

 県では、このような違反を確認した場合、事業者に対し、違反状態の解消が図られるよう指導や条例に基づく措置命令を行っているところです。

 また、指導や命令に従わない悪質な違反行為に対しては、条例の規定で罰則を定めていますが、条例の罰則では抑止力に限界があることも課題と考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 規制を行っているが、無許可の埋め立てや悪質な違反行為に対して抑止力に限界があるという認識ですね。こうした事態を受けて、国も動きだしました。「盛り土による災害防止に向けた総点検」が実施をされていると思いますが、どのような方法で調査を進めているのか、また、その進捗についてお尋ねします。

 

二場正義 総務部 防災危機管理局 防災企画課長

 

 8月11日付けで、国から都道府県に対しまして、盛土による災害防止のため、盛土の把握と点検を行うよう依頼がございました。

 盛土の点検作業に当たりましては、関係法令を所管する所属で構成いたします庁内連絡会を設置し対応しているところでございます。

 現在、県は市町村と共に連携いたしまして、概ね平成12年以降に形成されました、各種法令の許可・届出等資料から確認できる盛土、また国土地理院が示しました盛土可能性箇所のうち明確に盛土と推定される箇所、こうしたところについて把握する作業を行っているところでございます。

 今後、県と市町村は、把握した盛土のうち、国が重点点検箇所と位置付けた盛土につきまして、許可・届出等の内容と現状の相違などを、現地で点検することとしております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 「今後、国が重点点検箇所と位置付けた盛土等について点検する」ということですが、県内の重点点検箇所はどのような場所にあり、その場所はいくつぐらいあるのでしょうか。

 

二場正義 総務部 防災危機管理局 防災企画課長

 

 国からは、土砂災害警戒区域の上流域及び区域内、それから山地災害危険区域の集水区域及び地区内、それから大規模盛土造成地、これらを「重点点検対象エリア及び箇所」といたしまして、そのエリア及び箇所にある盛土を把握するよう、依頼があっております。現時点で、土砂災害警戒区域は、約1万8千区域、山地災害危険地区は、約6千地区、大規模盛土造成地は、約5千箇所ございます。

 今後、これらの場所にございます、概ね平成12年以降に形成された盛土について点検することといたしております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 重点点検箇所だけでも3万にも上るということですから、膨大な作業になるというふうに思います。しっかり調査をすすめていただきまして、危険な盛り土は見逃さず、まずは条例に基づく指導を行っていただきたいというふうに思います。

 さて、熱海の土石流を受け、各地で不安の声が上がっております。久留米市藤山町の住民からも、「現地を見てほしい。いくつものため池の上部に土砂が大量に捨てられていて危険」だと、こういう訴えがありました。地元市議団とともに現地視察を行ったところでございます。

 その一つのカリマタ池という、その池の上部には、地元水利組合が承認しなかったにもかかわらず、「3000㎡以下であるから条例違反ではない。構わない」と言ってですね、地元の業者が土砂を持ち込んだということなんです。池のすぐ上に土砂が持ち込まれておりまして、崩れれば、ため池の下の農地や住宅に被害が及ぶと、水利組合をはじめ地元の住民が心配しています。県として3000㎡以下だからということで指導ができないのでしょうか。

 

池田芳和 農林水産部 農山漁村振興課長

 

 本案件については、地元の水利組合からの要請により、県が現地調査を行い、3千㎡以下であったことを確認しております。 

 土砂埋立て条例の許可の対象となっておりませんが、事業者に対して、土砂流出の防止の対策を講じるよう働きかけたところであります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 条例対象ではないけれども、土砂流出防止対策は働きかけていただいたということです。土留めなどがたしかにあったんですね。しかし、水利組合の方はですね、「形ばかりでこれが効果があるとは思えない」と、いうふうにおっしゃっておりましてね、土砂を撤去してほしいと訴えておられました。

 また、カリマタ池のすぐ近くの同町北床池及び平原池の上部にも大量の土砂が持ち込まれていました。ここは、驚いたことにですね、国の「国営耳納山麓総合土地改良事業」の対象地区でございました、本来は果樹園でなければならないというところだそうです。しかし行きましたら、一面土砂でですね、果樹園とはまったく見えないわけですね。数本、このぐらいの(腰下、床から70~80㎝ほどを示し)「これはミカンです」と言われるのがあったぐらいでですね、ほんとに驚いたんです。

 2017年(H29年)の10月に、3年間の一時転用申請を行って、ここに残土が持ち込まれたということです。急こう配の見るも無残な残土捨て場になっておりましたが、国のパイロット事業で公費が投入された農地に、残土を大量に持ち込むということがあっていいんでしょうか。

 3年間の期限がもう過ぎていますが、土砂を撤去されずに、久留米市農業委員会が度重なる指導を行っているけれども従ってくれないということでした。県もこのことは承知されておられると思います。許可を受けた計画どおりに完了していない状況をどのように捉えておられますか。

 

德田輝光 農林水産部 水田農業推進課長

 

 久留米市でございますが、農地法の規定に基づき、農林水産大臣からの指定を受け、既に平成29年4月1日より県から農地転用の許可権限を移譲されておりまして、市が転用事業者への違反指導を行っているところであります。

 なお、一時転用許可の際、3年間を期限とする許可条件が付されている場合、その期限を超えても農地に戻されていない状況であれば、これは許可条件違反であるとそのように考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 指導権限は市に移っているということですが、許可条件違反ということが確認できると思います。ぜひ市が、権限があるということですけれども、市とともに違反状態を許さないよう力を尽くしていただきたいというふうに思います。

 これらの土砂ですが、地元のみなさんはですね、朝倉の災害土砂だというふうにおっしゃるんです。災害土砂については、どのように処理をされているのか。九州北部豪雨災害の際に発生した災害土砂はどれだけあったのか伺います。

 

金子喜年 県土整備部 企画課技術調査室長

 

 平成29年7月九州北部豪雨で発生した、県における災害土砂の処理につきましては、自らの工事内における埋戻や盛土での利用や、他の建設現場における有効利用を優先し、その他については公募等により選定した処分先へ搬出しております。

 次に災害土砂の発生量につきましては、平成31年2月開催の県庁内の関係部局で構成しました「九州北部豪雨に伴う流木・土砂対策会議」において、県、朝倉市、東峰村所管の原形復旧に伴う搬出対象土砂量を約208万㎥と推測しております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 約208万㎥、ということですから大変な量です。あの甚大な被害であった九州北部豪雨災害の復旧では相当な量の土砂が搬出されているということだと思います。この災害土砂がですね、復旧にために運ばれたのに、新たな場所で、違法に埋めたてられて、新たな災害を引き起こすというようなことは絶対にあってはならないというふうに思うわけです。土砂がどこに処分されたのかの報告はなされているのでしょうか。なされているのであれば、取り決めについてお伺いします。

 

金子喜年 県土整備部 企画課技術調査室長

 

 県発注工事におきましては、請負業者が土砂を処分する際に、まず処分地の計画書の提出があり、発注した事務所が法令への抵触がないことを確認したうえで受理します。搬出後には、持ち込み先での処分状況の写真を添付した上で処分の報告を受けています。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 それが厳格に行われているのであれば、災害土砂が違法埋め立てに使われることはないわけです。書面上の報告だけで、実際の処分がどうなっているかの確認はできていないのではないんでしょうか。写真付きで持ち込み先を報告しているのであれば、違法な処分が疑われる場合、あるいは調べてほしいと訴えがあった際には、報告通りであるかどうかを点検し、必要な指導を行うべきだと考えます。出先のほうに聞いたりしましたけれども、なかなか現地の調査ということにならなかったんですね。そうなっていないことが、違法行為を許す余地をつくっているのではないかと思います。

 住民の話では、業者が「土砂の処分単価が安いから適正処分などできない」と言っていたそうであります。この間のテレビ報道などでも、同様のことを土砂処分業者が証言をしています。実際に処分を行う業者にその費用が適正に支払われているかを点検し、指導できる体制が必要だと思います

 昨年3月に近畿ブロック知事会が、建設発生土の適正処理に関して、提言を出しています。「あらかじめ処理計画を作成・提出させる、発生から搬出・処理に至る流れを管理する、地方自治体が情報共有できる仕組みを作る、不適正処理を行った者への命令や抑止力のある罰則、条例で基準や手続きを上乗せできる規定」などを求めています。これに続き、昨年10月、関東地方の事会議でも、「土砂等の搬入・埋め立てを許可制にすること、許可基準を定めること、抑止力を持った罰則、立ち入り検査等の必要な権限に関する規定」などを法整備することを要求しました。熱海の土石流以前から、各地で土砂の問題は大問題になってきたということだと思います。

 今年7月の熱海の災害を受けまして、全国知事会からも複数回要望が出されたというふうに聞いております。本県としても、土砂の不適正処理が問題となっております、厳しい法規制を国に求めるべきだと考えますが、見解を伺います。

 

二場正義 総務部 防災危機管理局 防災企画課長

 

 本県では、条例を制定し規制をしていますけれども、罰則の強化などさらなる規制を強化するためには、土砂の埋め立てに関する法制化が必要と考えております。こうしたことから、先ほど、委員ご指摘もありましたけれども、全国知事会を通じ要望しております。今年の秋の国への提言要望におきましても、新たに重点項目の一つとして要望することとしております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 新たな重点項目として、法制化を要望されるということです。県の原状を踏まえて、災害を起こさない実効性のある内容になるように、具体的な要望をしていただきたいと、いうふうに思います。

 国土交通省は2015年にですね、2001年から2015年までに、建設残土の崩落事故は21件発生し、2人が死亡したことをすでに明らかにしていました。もっと早く法制化され規制できていたら、熱海の災害は防げていたのではないか、というふうにも思います。

 京都大学防災研究所の釜井俊考教授は「建設残土についても、産廃と同様のマニフェスト管理の導入を検討すべき」だと、「残土の行き先をきちんと追えるようにすることが必要」だということを述べています。

 こうした意見も踏まえて、国に対して要望していただくと共に、「盛り土」による災害が起こることがないよう取組みを強化していただくことをお願いし、質問を終わります。

 

 

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