● 22年03月04日 県議会報告

2022年3月4日 2022年2月定例会 高瀬菜穂子県議 「気候危機について 猛毒枯葉剤『2・4・5T』の撤去について JR九州住宅について」(大要)



2022年3月4日   2月定例会・高瀬菜穂子議員一般質問 答弁(大要)

 

 

<気候危機について>

 

高瀬菜穂子 議員

 

 日本共産党の高瀬菜穂子です。まず、気候危機対策についてです。わが党は、脱原発脱炭素、省エネと再エネ普及で、CO₂ 60%削減を目指す「気候危機打開のための2030戦略」を発表しました。脱炭素の取り組みが経済雇用の好循環につながるという視点は、国・地方脱炭素実現会議作成の「ロードマップ」とも重なります。

 環境エネルギー政策が専門の東北大学 明日香壽川教授らが参加する「未来のためのエネルギー転換研究グループ」は、省エネと再エネで2030年までにCO₂を60%削減する取り組みを行えば、新たな雇用と投資を生み出し、毎年254万人の雇用増と205兆円のGDP押上につながるとの試算を発表しました。

 このグループに福岡県分の試算をしていただきましたところ、今の技術の普及で、CO₂を2030年には56%~60%削減でき、2050年には93%削減できるとのことです。本県作成の産業連関表などを用いて、雇用についても試算をしていただき、2030年まで年間56,600人の雇用と年間7900億円の地域経済効果があるという結果をえました。年間56,600人とは、トヨタ九州の5倍の雇用です。しかも毎年です。

 これだけの効果をもたらす省エネ再エネの設備投資の規模は、民間も含め年4100億円と試算されました。県内GDPが約20兆円ですから、その2%分の投資がこの分野で行われることにより、雇用が25,000人程度増え、さらに省エネによる光熱費削減分が他の投資や消費に回ることで、2900億円の経済効果と23,000人の雇用増となり、さらに再エネ売電や自家消費の利益分900億円が他の投資や消費にまわるという好循環が起こり、全体として年間7900億円、56,000人という大きな経済雇用効果が生まれるということです。

 では、本県の取組みはどうでしょうか。中小企業を対象とした「エネルギー対策特別融資制度」が2014年から運用されていますが、新規融資枠はわずかに4億円であり、実績は年平均で1億5000万円程度です。農業者・漁業者の「近代化資金」は、省エネ化を図ることも対象としていますが、融資枠20億円に対して2020年度実績は15億円。また、省エネ・再エネに関する無料相談窓口の相談件数は2020年度70件でしかありません。あまりにも規模が小さいといわなければなりません。

 新年度、「グリーン社会の実現」予算として、約7億3400万円が計上されており、そのうち「中小企業等省エネ設備導入支援補助金」1億500万円、「省ネルギー住宅普及促進費」約1億2600万円が新規事業です。どのような内容か、お答えください。啓発予算900万円も計上されています。省エネ機器の使用で、光熱費がどれぐらい削減でき、CO₂がどれくらい減らせるか、などを具体的に知らせること、あらゆる分野で取り組むよう促すことが極めて重要だと考えます。これまでの取り組みも含め、啓発の内容をご説明ください。

 再エネは、補助金などのインセンティブがあれば、大きく進むことは明らかです。地域ソーラー発電、ソーラーシェアリングや、小水力、森林対策と一体のバイオマス発電など地産地消の産業育成を強力に推進していただきたいと思います。県として、再エネの普及拡大をどのように進めるのか、知事の見解を伺います。

 最後に、本県のCO₂排出割合は、産業部門が41%を占め、突出しています。大口排出事業所は、2017年で、日本製鉄八幡製鉄所が875万トン、三菱マテリアル九州工場544万トンなど、大量のCO₂を排出しています。石炭火力発電所も9箇所にのぼります。産業部門の取り組みは、国と産業界の自主的取り組みに任されていましたが、一体それで、CO₂削減ができるでしょうか。「地域脱炭素ロードマップ」には、「国・自治体・地域企業等が一丸となって速やかに実践」と書かれています。温室効果ガスを多量に排出する事業所に対してもCO₂削減に向け県として働きかけるべきだと考えますが、知事の見解を伺います。

 

 

服部誠太郎 知事

 

省エネに係る新規事業につい

 

 ご答弁を申し上げます。まず省エネに係る新規事業の内容についてお尋ねがございました。

まずこのうちですね、中小企業等省エネ設備導入支援補助金でございますが、これは中小企業の省エネを促進いたしますため、省エネ効果が期待できる空調、給湯設備などの更新やLED照明の導入等を行います際に、その経費の一部を補助するものでございます。

この補助にあたりましては、事前に省エネ診断を受診し、この診断に基づいた設備の更新・導入等を行うことを要件といたしております。

また、省エネルギー住宅普及促進費につきましては、既存住宅の省エネを促進いたしますため、地元の工務店のみなさん等を対象とした、技術講習会を実施いたしますとともに、戸建て住宅の外壁などの断熱改修や空調、給湯設備などの更新といった省エネ改修工事に対して補助を行うものでございます。

 

啓発広報について

 

 次にその啓発広報についてでございます。

 県では、地球温暖化に関する情報を広く掲載いたしました「ふくおかエコライフ応援サイト」を開設いたしまして、本県の施策や家庭での省エネに役立つ情報などを発信しております。

 その中で、例えば古い冷蔵庫やエアコンを省エネタイプに買い替えると、二酸化炭素の排出量や電気料金がどういうふうに変わるのかといった例を紹介しているとこでございます。

 また、省エネに役立つ活動に取り組む家庭を「エコファミリー」としてスマートフォン上で登録できるアプリを開発いたしまして、運用を行っております。

 このアプリでは、電気・ガス使用量の記録・グラフ化を簡単に行うことができますなど、家庭における自主的な取組みを促進するものとなっております。

 さらに、昨年1月に実施いたしました県民意識調査によりますと、地球温暖化については、若い世代の方ほど関心が薄くなっているということから、来年度は、この若い世代のみなさんを対象に、脱炭素へ向けた行動変容を促す啓発CMを制作をいたしまして、街頭ビジョンやSNS等を使って配信をしてまいりたいと考えております。

 

再生可能エネルギーの普及拡大に向けた取組みについて

 

 再生可能エネルギーの普及拡大に向けた取組みについてでございます。

 これまで本県では、再生可能エネルギーの普及拡大に向けまして、本県独自に開発いたしました「再生可能エネルギー導入支援システム」の活用、また専門アドバイザーの派遣などによりまして、市町村や民間事業者による導入を積極的に支援をしてまいりました。

 こういった取組みによりまして、県内各地で太陽光発電が導入されますとともに、苅田町の新松山工業団地におきます3社の大型バイオマス発電設備や、中小水力発電などの様々な施設の導入が進んでまいりました。

 その結果、再生可能エネルギーの導入容量でございますが、平成22年度末の30万KWでありましたが、令和2年度末には269万KWと、約9倍にまで大きく拡大をいたしました。

 また、昨年11月からは、北九州市におきまして、再エネ由来の水素を製造・輸送をし、各地で利用する実証事業の運用を本格的に開始をしたところでございます。今後これらの取組みや洋上風力発電の促進区域への早期指定に向けた取組みを進めますとともに、来年度から新たに県有施設への太陽光発電設備導入の可能性調査、地域脱炭素に取り組む市町村を対象にした研修会の開催、専門家チームによる助言などを実施いたしまして、再エネの更なる普及拡大に努めてまいります。

 

事業所に対する働きかけについて

 

 事業所に対する働きかけについてでございます。

 本県の温室効果ガス排出量の約4割を占める鉄鋼、化学などの産業分野での排出削減の取組みは、今月末に改定いたします「地球温暖化対策実行計画」の新たな目標達成のために重要でございまして、より一層の取組みが必要であると考えております。

 このため、温室効果ガスを多量排出し、その排出量について国への報告義務がある事業者が県内に持ちます約500の事業所に対し、事業者団体も活用しながら、新たな計画の周知を図りますとともに、一層の排出削減に取り組んでいただきますよう働きかけを行ってまいります。

 

 

 

<猛毒枯れ葉剤成分「2・4・5T」の撤去について>

 

高瀬菜穂子 議員

 

 次に、猛毒枯葉剤成分「2・4・5 T」の撤去について伺います。

 ベトナム戦争時に使用された枯葉剤と同様の成分「245T剤」が県営五ケ山ダムから1キロの山に埋設されている問題について、私は2018年9月議会で取り上げ、撤去と無害化を求めました。県は、毎年国に撤去を求めてこられましたが、国は「動かさないことが安全」などとして、40年以上も放置してきました。去る2月17日の衆議院予算特別委員会分科会で、わが党の田村貴昭衆議院議員の質問に、林野庁長官は「全国46カ所全ての埋設除草剤の撤去を念頭に取り組む」と初めて公式に答弁しました。撤去の方法、技術的知見、着手に至るスケジュール等に関し、国に丁寧な説明を求めるとともに、豪雨災害等によってダム湖に有害物質が流れ込むことのないよう早急な撤去を改めて求めていただきたいと思いますが、知事の見解を伺います。

 

 

服部誠太郎 知事

 

埋設除草剤撤去の要請について

 

 次に埋設されました除草剤撤去の要請についてお尋ねがございました。

 ご指摘がございました除草剤は、現在、林野庁佐賀森林管理署が、佐賀県吉野ケ里町の山林にセメントで固めまして、モルタルやビニールで覆って埋設をいたしております。

 本県といたしましては、この除草剤は五ケ山ダムや南畑ダムといった水源に近い場所に埋設をされておりますことから、毎年度、佐賀森林管理署に対し、埋設地の適正な管理と、抜本的な解決に向けた対策を検討するよう、要請を行ってまいりました。

 こうした中、林野庁は、近年の災害リスクの高まりから撤去を求める自治体の声を受けまして、今年度、佐賀県吉野ケ里町を含む全国4か所において、埋設除草剤を飛散させずに掘削処理する方法、手法につきまして、技術的な調査を開始しておるとこでございます。

 県といたしましては、国に対し、この調査の結果を踏まえ、抜本的な処理方法を早急に確立するよう、引き続き要請を行ってまいります。

 

 

<JR九州住宅について>

 

高瀬菜穂子 議員

 

 最後に、JR九州住宅について伺います。

 昨年12月14日、JR九州のグループ会社である「JR九州住宅」に対して、県は建設業法違反で営業停止の行政処分を行いました。まず、どのような違法行為が行われたのか、また、行政処分の内容はどのようなものだったのか、ご説明をお願いします。

 私は、昨年6月議会一般質問で、福岡東総合庁舎敷地有効活用事業に関わって、JR九州グループの子会社で福岡東区の「傾斜マンション」を施工した「九鉄工業」が協力会社として加わったことを不適切ではないかと指摘しましたが、知事は「要件を満たしている」ので問題ないとの認識でした。今回の事案は、特定建設業許可なしに元請け工事を行ったもので、「傾きマンション」同様、とんでもない欠陥住宅が出来上がっていました。JR九州グループの不祥事が連続する中、親会社であるJR九州の社会的責任が問われる事態ではありませんか。総合庁舎敷地有効活用の契約を見直す必要があると考えますが、知事の見解を伺います。

 

 

服部誠太郎 知事

 

JR九州住宅の建設業法における違反行為について

 

 次にJR九州住宅の建設業法における違反行為についてお尋ねがございました。

 同社は、平成29年度に受注いたしました複数の建築工事におきまして、特定建設業の許可を受けずに、6,000万円以上の工事下請契約を締結。建設業の許可を受けていない業者と、500万円以上の工事下請契約を締結。雇用関係のないものを工事現場の主任技術者として配置といった建設業法に違反する行為を行いましたことから、本県といたしましては、32日間の営業停止処分を行ったところでございます。

 

総合庁舎敷地有効活用の契約について

 

 福岡東総合庁舎敷地有効活用事業の契約についてでございますが、お尋ねのJR九州住宅は、契約の当事者ではございませんで、契約の解除条項に該当いたしませんことから、本件契約を解除することはできないものと考えております。

 

 

〈要望〉

 

高瀬菜穂子 議員

 

 気候危機対策について要望いたします。産業界に対して働きかけをしていくとの答弁は大変重要だと思います。ぜひよろしくお願いいたします。先ほど数字を示して紹介しましたように、省エネ・再エネへの投資は本県においても非常に大きな雇用と経済効果をもたらす可能性があります。県としても専門家の力を借りて試算をすべきだと思います。今の取り組みはやはり規模が小さく、これでは46%削減目標も達成できるのかと心配です。それぞれの課で取り組んでいても、細切れで全庁横断的になっておらず、どの分野にどれだけの投資を見込み、どれだけCO₂を減らすのか、全体像や目標がはっきりしませんでした。気候危機は世界的な課題であり、カーボンバジェットは残り僅かです。知事もすすめる「グリーン社会」の実現に向け、地産地消のエネルギー政策に大胆に取り組んでいただくこと要望し、質問を終わります。

 

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