● 22年10月04日 県議会報告

2022年10月4日決算特別委員会 高瀬菜穂子委員 質疑・答弁「福岡県における農業振興について」(大要)



2022年10月4日9月定例会(決算予算特別委員会)高瀬菜穂子委員質疑(大要)

 


 

<2022年決算特別委員会>

2022年10月4日

 

福岡県における農業振興について(大要)

 
 

高瀬菜穂子 委員

 

 日本共産党の高瀬菜穂子でございます。通告に従いまして質問を行います。
 ロシアによるウクライナ侵略は、世界の食料問題にも深刻な影響を広げています。わが党は、綱領で農業を基幹的産業と位置付け、食料自給率の向上を政策の柱に据え、農業の再生のための提案を行ってきました。しかし、農業人口は減り続け、今般の物価高騰の中で、「続けられない」「地域農業が崩壊する」とこれまでにない悲痛な声をお聞きしております。本県の農業を振興する立場から以下質問を行います。まず、総農家数、基幹的農業従事者数、経営耕地面積等の推移について資料要求をしておりますので、委員長、お取りはからいをよろしくお願いいたします。

 

〈資料要求〉

 

梶原洋伸 農林水産政策課長

 

 はい,直ちに提出いたします。

 

福岡県における農家等の推移のサムネイル

【資料】① 福岡県における農家数等の推移

 

高瀬菜穂子 委員

 

 資料をお配りいただきました。簡潔にご説明をお願いいたします。

 

梶原洋伸 農林水産政策課長

 

 令和2年度の本県の総農家数は約4万1千戸、販売農家数は約2万7千戸、基幹的農業従事者数は約3万8千人と、20年前と比べまして4割から5割程度減少しております。
 基幹的農業従事者数のうち、65歳以上の割合は66%、75歳以上の割合は30%と、20年前に比べまして高齢化が進んでおります。
 次に、経営耕地面積は約6万1千ha、農業産出額は1,977億円と、20年前に比べまして2割弱の減少となっております。
 なお新規就農者数は、近年380人程度で推移しております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 私は2016年の決算特別委員会でも、農業問題を取り上げました。その際、毎年、農家数で2,000戸、農業就業者で3,000人前後の離農が進んでいることを指摘した、確認したところですけれども、その後もさらに大きく離農が進んでいるという実態がわかります。この20年で総農家数は半減、販売農家が4割、農業産出額は411億円も減っています。特にこの農業産出額がこの5年間で大きく落ち込んでいることについてはどのように分析されているのか、お尋ねします。

 

梶原洋伸 農林水産政策課長

 

 品目別に比較しますと、野菜や花、米などの産出額の減少が大きくなっておりますが、これは、天候不良による不作や、豪雨災害の発生、コロナ禍による外食需要の減少などが影響したものと考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 前回の質問の際に、TPPの影響についてお尋ねしたんですけれども、この5年の落ち込みというのはその影響ではなくて、毎年の豪雨災害や天候不良、さらにコロナ禍の影響ということですね。天候不良や災害は今後も予測されますうえに、TPPの影響は今後ということになると、引き続き、厳しい状況が危惧されます。
 昨年12月に財務省「財政制度等審議会」の建議が出されていますが、これには「我が国の基幹的農業従事者数は、10 年後には約4割減少と、20 年後には7割減少することが見込まれているなどと書かれておりまして、農業者が今後も大幅に減っていくことが前提になっていることに大変驚きました。その上で農地の集約をすすめ、高収益型と輸出をすすめるなどとしていますけれども、これは本末転倒でないかと思います。内需を高め、自給率を高め、多面的機能を持つ農業の従事者を増やす方向こそ大事だと考えますが、この財政等審議会の建議の認識について、県はどう思われているでしょうか。

 

梶原洋伸 農林水産政策課長

 

 この財政等審議会の資料における基幹的農業従事者数の将来推計は、近年の趨勢を機械的に延伸したものと聞いております。
 県としましては、高齢化や人口減少が進む中、農業従事者の減少により、本県農業の持続性が損なわれることがないように、取り組んでいく必要があると考えております。
 このため、新規農業者の育成・確保や、担い手への農地の集積などに取り組んでいるとこでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 20年後に7割減少などとならないようにですね、施策の充実が必要だというふうに思います。
 先日、JAの組合長さんにお話を伺ったんですけれども、「もうかる農業が強調されているけれど、環境や多面的機能を保っている、守っているのは大多数のもうからない農業だ」というふうにおっしゃられた、そのこと大変印象的にききました。さまざまな形で農業従事者を増やすことが求められていると思います。財政制度等審議会の方向では、今ある直接支払い制度などもなくす方向ですから、「もうからない農業」を続けることも難しくなると私は怒りを覚えています。県としても、この方向では農業は守れないことを国に対して言っていただきたいと思います。
 さて、この現状を改善するためには新規農業者を定着させていくことが重要だと考えます。先程、小川委員から詳しい質疑がありましたけれども、あらためまして重なるところがありますが、毎年380人前後の新規就農者を迎えておりその定着率も高いというふうにお聞きをしました。新規就農者の定着のための取り組みと、実際に就農した農業者からは、どのような要望を聞かれているのか、お答えください。

 

川口哲也 経営技術支援課後継人材育成室長

 

 県では、国の交付金制度を活用しまして、就農前後の所得確保や、機械・施設の導入を支援し、初期投資の負担軽減を図っております。
 また、就農後は、普及指導センターにおきまして、農業の基礎を学ぶ講座を開催するとともに、個別に技術や経営の指導を実施しております。
 さらに、新規就農者相互の意見交換、プロジェクト発表などの技術研鑽の機会を通じまして、経営者意識の醸成を図っております。
 なお、新規就農者からは、「機械・施設への助成」や「農業技術や経営の指導」、「農業者相互の交流機会の提供」などが求められております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 新規就農者の要望に沿った、財政面、技術面の支援に加え、交流の場をつくることにも取り組まれているということですね。その中でも、安心して農業分野への挑戦ができるのは、やはり所得保障制度がつくられたからだというふうに思います。わが党は価格保障と所得保障で農業の担い手をつくることを政策に掲げてきました。天候不順や災害が起こる中でも、農業従事者を増やすためには、新規農業者に適用されている所得保障を広げることが求められているのではないかというふうに思います。ぜひさらに頑張っていただきたいと思います。
 さて、農業振興のためには、「市場を開放し、輸入を増やし、減反を迫る」という農政からの転換が求められると思います。ウクライナ危機は、食の海外依存の危うさを改めて示しました。日本の食料自給率はカロリーベースで37%と極めて低く、カロリー供給の中心となる穀物の自給率は28%で世界172の国・地域中128番目、OECD加盟38か国中32番目という低さです。かつて、米国のブッシュ大統領は「食料を自給できない国は国際的な危険と圧力にさらされている国だ」といったということですが、まさに日本はそんな危うさの中にあります。自給率については、県としても目標を持ち、高める必要があるのではないでしょうか。本県の自給率を、カロリーベースと生産額ベース、それぞれお答えください。また、全国ランキングも合わせてお答えください。県として目標を持つことについては、どのようにお考えでしょうか。

 

梶原洋伸 農林水産政策課長

 

 本県の令和2年度の食料自給率は、カロリーベースが17%、生産額ベースが36%であり、全国順位はともに第38位となっております。
 食料自給率というのは、ある地域で消費された食料を、その地域でどの程度賄えるかを示すものですが、国内では、県境を越えて自由に農林水産物が流通することから、県が独自で目標を設定する意義は低いものと考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 目標設定の意義は低いとのことでしたけれども、全国の自給率を上げるためにも、県としてもなんらかの目標を持つことは重要ではないかというふうに私は考えます。県として自給率向上の施策進めておられます。どのような取組みを行っているのか、お答えいただきたいと思います。

 

梶原洋伸 農林水産政策課長

 

 県では、輸入に依存している麦や大豆、畜産物の生産拡大に向け、これまで、高性能機械・施設や優良家畜の導入、また、ラーメン用小麦「ラー麦」や「はかた地どり」といった県独自品種の開発などに取り組んでいるところです。
 また、担い手の確保・育成や、県産農林水産物の販売促進、地産地消などにも取り組んでおります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 県独自の品種は、県産米をはじめご紹介のあった「ラー麦」「博多地どり」など、多くの県民から支持され愛されているというふうに思います。こうした品種開発にさらに 取り組んでいただきたいと思います。
 自給率向上のためには、開発とともに販路の確保が重要であり、地産地消の取り組みが特に大事だと考えます。本県議会においても、地産地消の学校給食はたびたび議論されています。農林水産部としても、県産米への助成を行い、県産小麦や米粉のパン、県産小麦の麺やナン、野菜などの供給で努力をされていると思いますが、さらに大きく学校給食などへの活用が広がるように取り組んでいただきたいと思います。そこで、学校給食を含め、地産地消を推進するため、どのように取り組んでおられるのか、お答えください。

 

前田統幸 食の安全・地産地消課長

 

 県では、学校給食における地産地消を進めるため、食育・地産地消ふくおか県民会議やJAと協力して県産米の利用を支援しており、そのすべての学校で県産米が利用されております。
 また、農林水産業の「応援ファミリー」を対象としまして、学校で、家族で食を学べるよう、野菜の収穫や味噌づくりなどの体験や「八女茶」、「伊都物語」などの生産者と交流する現地ツアーを実施しております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 学校給食の地産地消は、私も20年来お願いをしておりまして、特に県産小麦のパンの導入は繰り返し、農林水産部と教育委員会に要望してきました。100%輸入小麦でありました給食パンは、いま、県産小麦50%のものや米粉パンなどのシェアが増えております。また、県産小麦のナンはとてもおいしいと評判です。輸入小麦の価格が上がっている今、安全でおいしい県産小麦100%のパンに切り替えていただきたいと思っておりまして、教育委員会や学校給食会とも協力して進めていただくよう改めてお願いいたします。
 次に、家族経営の農家にとって重要な役割を果たしている直売所について伺います。直売所は、地域農業を守り、自給率向上にも寄与していると考えます。県としては、直売所への支援どのように行っているか、お答えください。

 

前田統幸 食の安全・地産地消課長

 

 県では、昨年度から、県内の直売所や観光農園を巡るモバイルスタンプラリーこれを実施しまして、直売所などを訪問するきっかけをつくって、県産農林水産物の購入を促進しているところでございます。
 また、平成26年度から、地域の農産物の魅力を体感していただくために、毎月19日の「食育の日」に県庁のロビーにおきまして県内各地の直売所による出張販売を実施しておるところでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 特に販売促進の支援を行っているということです。さらに、直売所の継続発展のため、それぞれの要望を聞いて、直接支援も強めていただきたいと思います。
 次に、自給率にも多大な影響を与えかねない「水田活用直接支払い交付金」の見直しについて伺います。この交付金見直しは、農家をさらに苦しめるものになると、国会では党派を超えて、この方針に対する見直しの要求が出されました。本県においても、この交付金の見直しによる影響があると思いますが、県としては、どのように考えているのか、お答えください。

 

德田輝光 水田農業振興課長

 

 国は今年度以降の5年間で、一度も水稲の作付が行われない農地を交付対象から除くとしておりますが、具体的な要件については現在、検討中と承知しております。
 「水田活用の直接支払交付金」は、麦・大豆等を組み合わせた水田フル活用の推進とともに、地域の特色ある産地づくりに取り組むための重要な交付金と考えております。
 今回の見直しにあたっては、生産現場から、「水稲以外の大豆等の作物を6年以上作付してローテーションをおこなっている地域もあるので対応が困難」などの意見が出されておりますので、県としましては、現場の実態を十分に踏まえ検討するよう、国へ要望してまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 現場の実態をしっかりと国に伝えていただきたいと要望いたします。
 最後に、物価高騰対策について伺います。燃油高に円安誘導も加わり、農業資材価格が軒並み高騰、既に今年1月の時点で肥料価格は前年比10%、飼料は16%、光熱動力費は34%アップと言われています。燃料や肥料原料の多くを海外に依存してきた日本農業の構造的なもろさが浮き彫りになっているといえます。すでに、6月議会、本9月議会で、補正予算が組まれましたが、農家からは、「この物価高騰の中、どれだけの農家が生き残れるんだろう」との悲痛な声を聞いています。持続可能な経営となるように引き続きの支援をお願いしたいと思います。
 そんな中で、先日、宮若市のブドウ農家、また宗像の畜産農家からお話を伺いました。肥料を自力でつくるなど化学肥料を減らす取り組み、また畜産農家がコメなどをつくる農家と連携して、飼料をつくる努力がすでに進められておりました。こうした取り組みを進めるため、県はどのような支援を行っているのか、お答えください。

 

野田美治 畜産課長

 

 肥料の高騰対策につきましては、国の新たな対策の要件であります二つの化学肥料低減の取組みを上回る三つの取組みを実施する農業者に対し、ワンヘルスの推進にもつなげるため、県独自の上乗せ助成を実施してまいります。
 また、家畜の飼料高騰対策については、県独自の支援策として、配合飼料や乾牧草の購入に対する助成を新たに実施するとともに、配合飼料原料の自給率向上に向け、収穫機や飼料用粉砕機など、生産・加工に必要な機械の導入を支援してまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 今議会で予算化された施策が適応されるということだというふうに思います。
 国では、「みどりの食料システム戦略」も提唱され、化学農薬・化学肥料の低減、有機農業の推進も目標をもって進められています。今回予算化された県独自の支援策の活用を含め、こうした取り組みを強化していただきたいと思います。あわせて自給率向上を柱に、家族農業を含め、すべての農業者を支援し、本県農業を振興していただくよう要望しまして、質問を終わります。ありがとうございました。


-本文PDF-

農業問題について(大要)

 

-要求資料PDF-

福岡県における農家等の推移

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