● 17年10月06日 県議会報告

2017年10月6日 2017年決算特別委員会 総括質疑 山口律子委員質疑・答弁「防災・減災対策について」(大要)



≪2017年決算特別委員会≫

2017年10月6日

 

 

総括質疑 防災・減災対策について(大要)

 

山口律子 委員

 日本共産党の山口律子です。防災・減災問題について質問いたします。

 7月5日の朝倉地方を襲った集中豪雨は9時間に770ミリという観測史上最高の雨と言われています。

 このため大規模な山腹崩壊や崖崩れが発生し、大量の土砂と流木が一気に河川や集落を襲い、昭和28年の大水害以降、県内では最も人的被害が多い災害となりました。そこでまず治山事業について伺います。

 

 治山ダムは、本来、森林の造成・維持に必要な施設でありますが、今回の災害で土砂や流木の流出を防いだ治山ダムは重要な防災施設と認識しております。

 つきましては、近年の治山ダムの設置数と本年度の予定をお聞かせください。また、今回の災害を受けてどのような対策を講じられるかご説明ください。

 

半田英彦 農村森林整備課長

  治山ダムの設置数につきましては、平成27年度には74箇所、28年度には72箇所、本年度につきましても、同程度の約70箇所設置することとしております。なお今回計上しました補正予算により、設置個所を増やす予定であります。

 また、今回の災害で流木の捕捉に一定の効果がみられました透過型の治山ダムを、従来のコンクリートダムと組み合わせて設置するなどの対策を進めることとしております。

 

山口律子 委員

 本県の約45%は山地となっていますが、県では毎年50億円程度の予算をつけて治山事業を行っています。今の異常気象のもとではどこででも今回の様な土砂災害が起きる事が予測されます。国の方でも「流木災害等に対する治山対策検討チーム」で災害の発生要因や今後の対策を検討することになっていますが、その結果を受けて総合的な山地災害対策をしっかり進めていっていただきたいと思います。

 

 本県では、今回の九州北部豪雨災害を含めてこの10年間だけで4回も土砂災害等の大規模災害が起きています。

 平成21年の豪雨災害直後の9月議会でわが党の真島省三県議(当時)が一般質問で災害問題を取りあげました。そのうちの一つとして土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域の指定箇所問題を取りあげ、当時の県内の土砂災害危険箇所、約1万3千箇所の内、地域指定を受けた箇所は4市530箇所しかなく全国でも著しく遅れていると指摘しその推進を求めました。

 ところが現在は、土砂災害警戒区域指定が平成28年度末現在で17,628箇所、特別警戒区域が16,086箇所となっています。

 当時困難と言われた区域指定が短期間のうちに整備出来た要因等について伺います。

 

行德恒光 砂防課長

 平成21年7月に篠栗町で発生した土石流により2名の方が亡くなられました。この災害を契機に平成22年度より基礎調査といわれる区域を指定する際の測量等を行うための予算拡充を行いました。また市町村協議や住民説明会を円滑に行うため、砂防課職員の増員も行いました。これらのことにより短期間に指定を進めることができたと考えております。

 

山口律子 委員

 必要な予算と体制があればできるということですね。

 今回、朝倉地方での記録的な集中豪雨による7 月5日の発災時、土砂災害警戒情報を関係市町村に発信したのは14時10分と伺っています。土砂災害警戒情報の発令にも関わらず、あれだけ多くの人的被害をもたらした要因等については国を含めた関係機関が連携し、多面的角度から検証し、今後の対策に生かしていくと9月議会で答弁されました。

 糸島市などでは、1機3万8千円の戸別受信機を来年度にもレッドゾーンの3千世帯に貸与するとの対策が示されています。今回の災害の教訓を生かしてソフト対策事業についても万全の対策を講じていただきたいと思います。

 次にハード事業について伺います。

 多くの県民は避難対策だけでなく、生命、財産を守るための土砂災害対策事業を強く求めています。

 県内には土砂災害の危険ヵ所が13,150箇所ありますが、その中でも特に危険な5,571箇所については土石流、地滑り、崖崩れ対策についてハード事業を行っています。その進捗状況について説明願います。

 

行德恒光 砂防課長

 県内には、土砂災害危険箇所のうち、保全人家5戸以上の箇所や公共的な施設がある特に整備が必要な箇所は、5,571箇所となっています。

 そのうち、整備済みの箇所は、平成28年度末現在、965箇所となっており、整備率は、17.3%となっております。

 

山口律子 委員

 今の説明だと5,571箇所の必要ヵ所に対して、965箇所が整備済みですから約83%、4,606箇所が未整備ということになります。今のペースでいけば、完了まで100年近くかかることになります。

 今回のような人的被害を含む甚大な被害状況からすれば防災・減災の土砂災害対策事業は最も急を要する事業だと思います。異常気象のもと、県下どこでも起こりうる集中豪雨などを想定し、新たな対策が必要だと思います。今後どの様な整備を進めていくのか県の見解を伺います。

 

行德恒光 砂防課長

 ハード対策については、保全対象の人家戸数や介護施設の有無、過去の災害履歴などを総合的に勘案し、順次整備を実施しております。

 しかし、ハード対策を進めるにあたっては、工事に関するご理解や、土地の提供等、地元の協力が必要であり、多大な費用と時間を要するものと認識しております。

 そのため、早期の効果が期待できるソフト対策として、土砂災害警戒情報が発表される前に、土砂災害発生の危険度がわかる「土砂災害危険度情報」をあらかじめ登録した要配慮者施設に自動配信しています。

 今後は「防災メール・まもるくん」を活用し、情報を一元化した上、一般の方にもプッシュ型で配信するなどシステム改良を行い、ソフト対策の充実にも努めてまいります。

 

山口律子 委員

 今回の豪雨災害では、災害救助法の適用を受けていない北九州市でもがけ崩れなどの土砂災害は120箇所に上っており、数字としてはもっとも多くなっています。

 先日、北九州県土事務所にも来ていただいて、八幡東区の被災住宅を調査しましたが、一階部分に土砂が流入し、住めない状態になっていました。80代のご夫婦で、トイレとお風呂をバリアフリーにリフォームした直後で、大変なショックを受けておられました。今後の雨で、土砂がさらに下の住宅まで流れるのではないか、ということを心配しておられます。

 先日、国に土砂対策について要請しましたが、その折、「交付金制度を柔軟に活用して対応する」との答弁を得ました。こうした箇所について、人命と財産を守る立場から、柔軟に対応していただくよう強く要望いたします。

 

山口律子 委員

 次に河川の整備計画の策定と整備事業について伺います。

 県が管理している県内52水系のうち、河川整備計画があるのは13水系に留まっています。平成21年の「中国・九州北部豪雨災害」直後の9月議会で当時の真島省三県議が一般質問で改正河川法によって義務付けられている河川の整備計画について質問しています。その当時52水系のうち、整備計画が策定されていたのは7河川でした。あれから8年がたちますが、整備計画の策定が何故遅々として進まないのか伺います。

 

松原国浩 河川課長

 河川整備計画についての現在の策定状況は、2級河川においては52水系のうち13水系を策定済みであり、4水系で策定中です。

 河川整備計画は、「治水」、「利水」、「水の環境整備」について総合的に策定する必要があり、学識経験者の意見を聞くことはもちろん、関係地域の住民のみなさまの意見も聞くなど、様々な手続きを踏む必要があります。

 残りの河川についても、過去の浸水被害、流域の家屋などの集積状況や人口などを勘案し、河川改修の優先度が高い河川から順次策定を進めて参りたいと考えます。

 

山口律子 委員

 今、お答えがありましたように、現在策定中のところを加えても県が管理をしている52水系のうち、3分の1しか整備計画が進んでいません。進まない最大の理由は予算上の制約と思います。ここ10年間の河川課の総予算は200億円から250億円で推移しています。

 県民の生命や財産を守る上からも費用対効果も考えてしっかり予算をつけて、河川整備計画を早めていただきたいと思います。

 次に河川整備計画に基づく河川整備について伺います。

 本県の治水対策が急ピッチで進められてきたのがダム開発事業です。1000億円以上かけた五ヶ山ダムが完成しましたし、伊良原ダムも当初の事業費を大幅に上回る880億円かけて完成直前まできています。ダムがある河川は基本的に河川整備計画がありますが、河川の整備事業が追いついていないのが現状だと思います。

 5年前、筑後地方を襲った集中豪雨で1級河川の矢部川水系の沖端川の堤防が決壊し、柳川市などが冠水しました。当時、矢部川の上流にある日向神ダムが3度にわたって放流し、自治体関係者はダムの放流が矢部川や沖端川の決壊につながったと言っておられました。ダムの治水効果は、ダム下流域の河川整備があって効果が発揮されます。そこでお尋ねいたします。

 上流にダムがあっても局地的に降る集中豪雨のため、県内の中心都市である福岡市、北九州市等で度々浸水被害がおこりました。現在の異常気象状況のもとで河川の整備計画に基づく整備事業をどの様なスピードと対策で行おうとしているのか伺います。

 

松原国浩 河川課長

 ダムによる効果は、上流からの流量をカットすることにより、中下流部での治水安全度の向上を図ることです。

 ここで、現在建設中の五ヶ山ダムのある那珂川を例に挙げてご説明します。

 五ヶ山ダムの完成と、平成26年度に完成した那珂川床上浸水対策特別事業により、平成21年7月に那珂川町や福岡市に甚大な浸水被害が発生した洪水と同規模の雨が降ったとしても、水位を低下させ、堤防から水があふれることを防ぐことが出来ます。

 このようにダムによる洪水調節と下流の河川改修を一体的に進めることが重要であると考えます。

 今後とも更なる治水安全度の向上に向けて、事業効果を勘案しながら整備を着実に進めて参ります。

 

山口律子 委員

 ダムによる洪水調節と河川改修を一体的に進めるとのご回答がありました。

 過去、福岡市の心臓部である博多駅周辺が2度にわたって冠水しました。県は、国の激甚指定を受けて御笠川の本格的な改良普及に取組み、福岡市が博多区の山王公園を利用して巨大な調整池を作りました。それ以降、度々集中豪雨に見まわれましたが浸水被害を出していません。ダムによる治水効果を否定しませんが、御笠川の様な総合的な治水対策を進めていっていただきたいと思います。併せて河川の正常な治水機能が発揮されるよう、土砂の浚渫についてもしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 

山口律子 委員

 最後に災害の被害状況把握について要望いたします。

 今回の朝倉地方を中心とする豪雨災害の被害額について現在のところ約2,000億円と県は発表しています。県は、公共土木の被害や農業林業被害、商工被害等は含まれていますが個人資産である家屋の被害額は今回も含まれていません。

 わが党はかねてより家屋被害額等についても入れるべきと主張してきました。

 これに対し、県は、家屋被害の被害額を出すのは実務上困難であるのと個人資産は基本的には災害復旧事業という制度に入っていないから算定には加えないといってきました。

 しかし、災害被害について被災した関係自治体、例えば平成15年に甚大な浸水被害を受けた飯塚市は被害件数 床上浸水1,208棟、床下浸水691棟等と合わせて被害総額を187億9,900万円と発表し、二度と浸水被害が起きないよう国と県に対し、排水施設の整備や県の管理河川である明星川の整備を強く求めました。整備の結果、15年がたちますが、飯塚市内で浸水被害は起きていません。

 頻繁に多発する自然災害に対し、復旧、復興はもとよりしっかりとした防災・減災対策を講じるためにも、家屋などの被害額を含めた被害状況の把握と公表が必要です。今回の朝倉地方の災害に対し国は熊本地震では支援した家屋などの公費解体撤去は支援しないといっています。公的支援を抜きにして朝倉市の復旧復興はありえません。飯塚市の先例が示すように被災した関係自治体が家屋などの個人資産を含めた被害の全容をつかみ、国に支援を求めることが重要です。災害時の被害状況の把握のあり方について検討していただくよう強く要望いたします。

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