● 18年03月15日 県議会報告

2018年3月15日 2018年予算特別委員会・高瀬菜穂子委員質疑・答弁「JR九州の公共性・公益性について」



≪2018 年予算特別委員会≫

2018 年3月15 日

 

JR九州の公共性・公益性について

 

高瀬菜穂子 委員

 

 日本共産党の高瀬菜穂子です。JR九州の公共性・公益性について質問します。

 

 JR九州は、3月17日のダイヤ改正において、一日当り在来線特急24本を含む、117本の運行本数削減を行うとしています。まさに会社発足後、最大の大幅減便です。その他、日豊線の特急のワンマン化の拡大や、一部先送りされましたが大分市の8駅の無人化など、大合理化計画を強行しようとしています。

 今回のダイヤ改正によって、本県の利用者・沿線住民にどのような影響が出ますか。また、JR側から県や沿線自治体に対して十分な説明や協議がありましたか。お尋ねします。

 

岩佐孝徳 交通政策課長

 

 JR九州が発表したダイヤ改正は、新幹線では6本、特急では24本、在来線の快速・普通列車で87本の計117本という、JR九州発足後最大の減便であります。

 ダイヤ改正は、通勤、通院、買い物などの沿線住民の日常生活、観光などを目的に本県を訪れる旅行者の移動手段の確保などに影響を及ぼします。

 昨年12月15日にJR九州がダイヤ改正を発表する直前に、県や沿線市町村に117便を減便するという説明はありましたものの、具体的な路線名や減便の内容についての説明はございませんでした。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 十分な説明はなかったということですね。

 県はこの問題についてどのように対応されましたか。

 

岩佐孝徳 交通政策課長

 

 県では、今回の大幅減便公表直後に九州各県に呼びかけ、12月26日に知事及び議長の連名で「平成30年春のダイヤ改正の再考」と「接続改善など鉄道利用者の利便性の向上」を求める緊急要望を行っております。また、その後も県内の市町村と連携し、改めて要望を行いました。

 このほか、「筑後7国活性化協議会」、「県南総合開発促進会議」、「京築北九州東部振興会議」でも要望を行ったところでございます。

 要望の際、JR九州からは、「改正後も利用者の声を聞き、利用状況を把握しながら変えるべきものがあれば対応していく」との回答を得ましたところから、現在、市町村、高等学校に対し、今回のダイヤ改正の具体的な影響調査を行っており、その結果を踏まえ、必要に応じて見直しを求めてまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 その調査は大変重要だと思います。

 結局JR九州は、九州各県や沿線自治体からの抗議を受けても、ほぼ当初計画通り強行しようとしているわけです。あまりにも横暴だと思います。

 117本の減便と言いますが、実際は部分的なカットなどでもっと影響があるんです。

例えば、いま日田彦山線の1番列車は5時2分添田発・小倉行きですが、これが後藤寺

駅発となり、添田駅発は今の2番列車が始発になるということです。添田駅から、今

の一番列車に乗っている学生さんや会社勤めの方が影響を受けることになります。

こうした部分的カットや区間の見直しを含めると、約400本が影響を受けると言われて

います。

 JR九州は、こうした詳細も明らかにせず、十分な説明も協議もなく、これだけの大幅な改正を一方的な通告に等しいやり方で強行しようとしています。関係自治体や利用者から怒りの声が上がるのも当然です。今回の知事の迅速な動きは評価するところです。引き続き、影響調査の結果も踏まえ、ダイヤ改正の見直しと利便性の確保を、強く求めていただきたいと思います。

 

 次に、日田彦山線について伺います。昨年の豪雨災害から8ヵ月が経ちましたが、被害を受けて一部不通になっている区間について、いまだ復旧の見通しが示されておりません。県はJR九州とどのような協議をされていますか。

 

岩佐孝徳 交通政策課長

 

 7月の被災直後に早期復旧について、知事と議長の連名により、JR九州に緊急要望を行ったところでございます。

 その後、JR九州が「復旧費は約70億円に達する見込み」と発表しましたが、これはJR九州が試算した経費の総額で、県による災害復旧事業との調整を図ることでJR九州の負担を軽減することができることから、現在、その検証作業と災害復旧事業との調整を行っております。

 2月中旬に、JR九州の青柳社長が知事を訪問し、「鉄道での復旧に取り組んでいきたい」、「福岡、大分の両県と沿線市町村といっしょに検討していく場を設けたい」との要請がございました。知事からは、「鉄道での復旧との基本的な考え方を示していただいたと理解した」、「検討の場の設置については、関係自治体との調整のうえ検討していきたい」と回答したうえで、「地元負担がまずありきではなく、これを前提とせずに議論を始めることが必要である」と指摘したところであります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

  その指摘も大変重要だと思います。

 JR側が「鉄道での復旧」との立場を表明したことで、ようやく一歩進んだ形です。知事、添田町の寺西町長、東峰村の渋谷村長をはじめとする、様々な働きかけがあっての成果だと思います。両町村で署名活動も取り組まれ、昨日6200筆を超える署名を添えて、JR九州に提出したとも報道されております。まずはJRの姿勢を一歩変えさせました。

 しかし、JR九州の青柳社長は、「復旧後に運営する環境づくりができるのか、という議論が必要」と言っていますし、過去には「継続性のない路線に投資はできない」とも言っています。「復旧と並行して持続可能性の協議を」という姿勢は変わっていません。

 「鉄道での復旧」「JRによる路線維持」を守りぬいていただきたいと思います。沿線の自治体や住民は、切実な思いで見守っています。まずは一日も早く、復旧・再開のメドを示していただきたい。この点、よろしくお願いします。

 JR九州は、これまでも香椎線、筑豊線の駅無人化など、構造的な赤字体質にある鉄道事業の効率化を強引なまでに推し進めています。いまや駅の無人化率は59%です。

 元々、国鉄の分割民営化の時点で、北海道、四国、九州の三島会社は、輸送量が少なく経営が苦しくなることは想定されていました。そのため、国鉄が負っていた借金を引き継がせることなく、また国から経営安定基金を支給され、九州は約3877億円ですが、その運用収益で赤字を補填する仕組みがつくられました。

 JR九州は、2016年の完全民営化の際、経営安定基金を国に返済していません。その3877億円はどのように取り扱われたのでしょうか。

 

岩佐孝徳 交通政策課長

 

 経営安定基金の取り扱いについては、九州新幹線の貸付料の開業後30年後までの一括前払い2205億円、鉄道資産取得のために(独)鉄道建設・運輸施設支援機構から借り入れた無利子貸付金の償還財源への振替800億円、鉄道ネットワーク維持・向上に必要な鉄道資産への振替872億円、計3877億円に充当されております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

  九州新幹線の借り上げ料を30年分一括前払い、貸付金の償還財源などに使ってしまった、無くなったということですね。もともと国民の税金ですよ。こんなことが一体許されるのでしょうか。

 JR九州は、鉄道事業の赤字を補填してきた基金を無くすことで、固定資産の減価償却負担を単年度で約180億円軽くし、年100億円の新幹線借り上げ料を無くしました。こうした財務処理で鉄道事業を黒字化し、株式上場を果たしています。

 要するに、株式上場のために、路線維持のための基金をむりやり食いつぶしたわけですよ。ひどいじゃないですか。

 赤字補填のための基金が無くなり、今後、鉄道事業はますます合理化されるのではないでしょうか。不動産など儲かる部門へは積極的に投資し、赤字だからと鉄道事業を縮小していくやり方は、社会的インフラとしての公共交通の役割を逸脱するものだと思いますが、県の見解はいかがですか。

 

岩佐孝徳 交通政策課長

 

 鉄道事業は、住民の日常生活の維持はもとより、地域経済や社会の発展に大きな影響を及ぼす極めて公共性、公益性が高い企業でございます。

 完全民営化に際して経営安定基金の果たしている機能が引き継がれた経過を踏まえれば、JR九州は鉄道ネットワークを維持する責務を有していると考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 まったく同感です。赤字補填のための経営安定基金を食いつぶしておいて、災害の際の鉄道復旧が出来ないという話は通りません。路線の維持は株式上場の際のJR九州の約束でもありました。「路線を維持する責任がJR九州にはある」と声を大にして申し上げたい。その立場で、しっかりものを言っていただきたいと思います。

 

 私は、JR九州が、経営の優先基準として、公益性よりも収益性を追い求める姿勢に、利用者の利便性とともに、安全性について大変懸念をしております。

 国の運輸安全委員会は、鉄道事故と重大インシデントについて調査を行っています。2001年からのデータが公表されていますが、調査された2001年から2017年までの鉄道事故件数と重大インシデントはそれぞれ何件ですか。そのうちJR九州は何件ですか。

 

岩佐孝徳 交通政策課長

 

 運輸安全委員会の鉄道事故報告書によりますと、2001年から2017年までの17年間で、鉄道事故は265件、重大インシデントは45件、このうちJR九州は鉄道事故が30件、重大インシデントは7件となっております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 JR九州は鉄道事故で総数の11%、重大インシデントで16%を占めています。私鉄も含めた旅客鉄道事業者の数は171もありますので、1割以上をJR九州1社が占めているというのは、相当に高い割合だと見なければなりません。

 鉄道の人員の削減・下請け化で、車両や施設・線路の保守点検など、技術の継承が困難になっています。検査周期も延伸されました。駅や新幹線ホームの無人化など、合理化も進められています。こうしたことが積み重なって、重大事故につながるのではないでしょうか。

 福知山線事故を受けて、鉄道事業法は18条2項が追加され、安全性の向上が鉄道事業者の義務であることが謳われました。安全性の確保こそ、経営の優先基準としていただきたい。この点、強くJR九州に求めていただくよう申し添えておきます。

 

 JRをめぐる一連の問題については、国の責任も問わなければなりません。

 全国で、鉄道路線の廃止や、合理化が相次ぐ根本には、本州会社と三島会社の格差をもたらすことを前提とした分割と、鉄道事業を利益優先・市場任せにする民営化によって、鉄道事業の公共性と社会的責任が後景に追いやられました。

 2000年には鉄道事業法の改正で、路線廃止を認可制から事前届け出制に規制緩和し、これ以降、鉄道路線廃止が一気に加速しています。今回のJR九州の大幅ダイヤ改正や駅無人化の強行的な姿勢の背景にも、このことが影響しているのではないかと思われます。

 国にこそ大元の原因があると言わなければなりません。

 

 分割民営化後30年、高速道路網が倍近くになり、都市への人口集中、絶対的人口減と高齢化のなかで、鉄道をめぐる環境は大きく変わっています。鉄道会社や自治体任せにするのではなく、安全・安定輸送を今後維持するために、国が責任を果たすよう強く求めるべきではないでしょうか。

 最後に、部長に、JRに対する働きかけとともに、国への働きかけについても併せてお答え願います。

 

小山英嗣 企画・地域振興部長

 

 鉄道事業は、住民の日常生活の維持はもとより、地域経済や社会の発展に大きな影響を及ぼす極めて公共性、公益性が高い企業でございます。

 固定資産税などの税の優遇措置、完全民営化に際しての経営安定基金の取り扱いなどを勘案すれば、JR九州を一般の民間企業と同列に論じることはできず、より高い社会的使命を有していることを認識したうえで、事業運営を行っていただく必要があります。

 県としては、まずは、九州各県、議会、県内市町村との連携を強め、JR九州に対し、公共性の高い交通機関としての認識をもって事業運営を行うよう、今後とも粘り強く働きかけを続けていきたいと考えております。 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 まずはJR九州に対して、公共性を果たすよう働きかけるということですね。そのことは、しっかり頑張っていただきたいですが、国について言えば、イギリスやドイツなど、いったん鉄道事業を民営化した国でも、再び公的な責任を強めています。通学や通勤、通院など、「国民の移動する権利を保障するのは国の責任である」との考えからです。

 

 わが党は昨年4月、「鉄道路線廃止に歯止めをかけ、住民の足と地方再生の基盤を守るために」という提言を出しました。その内容ですが、

  • 不採算地域での赤字を補填、老朽設備の更新などを支援するための「公共交通基金」を創設し、財源はガソリン税など自動車関連税、航空関連税などの一部を充てることや、大型事業の見直しでつくること。
  • JR本州会社の巨額利益の一部を公共交通基金に組み入れ、三島会社に還流させる仕組みをつくる。
  • 災害復旧基金をつくり、災害を原因とする鉄路廃止をなくす。
  • 中小私鉄や三セクの基盤強化と赤字補填の支援制度を抜本的に拡充する。

など、柱としています。

 最後にこのことを紹介し、また、その実現のために力を尽くす決意を申し上げ、質問を終わります。

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