● 18年10月05日 県議会報告

2018年10 月5日 2018年決算特別委員会 高瀬菜穂子委員質疑・答弁「災害対策について」 (大要)



<2018年決算特別委員会>

2018年10月5日

 

災害対策について(大要)

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

日本共産党の高瀬菜穂子です。災害対策についてお尋ねします。 

6年前の八女を中心とした豪雨災害、一昨年の熊本地震、昨年の九州北部豪雨災害、そして今年の西日本豪雨災害と毎年のように災害が続き、職員の皆さんもその対応で本当にご苦労されていると思います。災害対策については、本9月議会においても、さまざまに議論されてきましたが、私が本日まず、取り上げたいのは、災害の規模により、制度の適用に線引きがあるという問題です。

第一に、仮設住宅の期限についてであります。先ほど栗原委員から同様の質問がありましたので、重複を避け、質問を省略しますが、熊本地震と昨年の九州豪雨災害では、国の対応に大きな違いがあります。

 

特定非常災害の場合は延長を認めるが、そうでない場合は、期限は2年で延長しないということです。先ほども指摘がありましたが、昨年の九州北部豪雨災害は、9時間で700ミリを超える豪雨により、大量の流木と土砂の流出を伴う甚大な被害をもたらした災害でした。そのため、復旧についても時間がかかっており、自宅を元の場所に再建できるかどうかの判断にも時間を要します。そんな中で、国が「期限は2年」で延長は認めないというのはあまりに冷たいやり方ではないでしょうか。被災の実態や復旧の状況を勘案して、実情にあった措置をとるべきだと思います。災害の規模により線引きするのでなく、被災者が一人たりとも路頭に迷うことがないように、仮設住宅の期限について必要に応じて延長するよう国に強く求めていただきたいと思います。

 

次に被災農家の問題について伺います。

農業者支援策である「経営体育成支援事業」について、昨年と今年とで制度に違いがあります。ご説明いただくとともに、これに対する県の見解を明らかにしてください。

 

中馬俊介 水田農業振興課長

 

 国の経営体育成支援事業については、原則、補助率が10分の3以内となっており、事業成果の目標設定などの採択要件があります。

 その上で、実際に災害が起きた場合、施設や農業機械の全国的な被害状況を考慮して、補助率や採択の要件が緩和される「被災農業者向け」経営体育成支援事業が発動されると聞いております。

 例えば、最近の事例では平成28年熊本地震や今年の7月豪雨災害で、この事業が発動され、補助率を2分の1以内に引き上げるなどの措置が講じられております。

 県としましては、こうした状況であることから、国に対して補助率の引き上げや予算確保などの要請を行ってきたところでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 熊本地震や今年の災害は被災農業者向けの制度が発動されたのに、昨年の北部豪雨災害では、「被災農業者向け」は採用されずに、通常の「融資主体型」の優先適用になったということです。県も国に対し、補助率の確保などを要求したとのことですが、あれだけの被害をもたらした災害で、「被災農業者向け」ではなくて、通常の制度の適用ということに、まず驚きを隠せません。

6年前の八女市を中心とした北部豪雨災害、2016年の台風被害や熊本地震、そして今年の豪雨災害では「被災農業者向け」が適用されており、融資が前提でない支援策が適用され、特に熊本地震と今年の豪雨災害では、補助率が通常の30%から50%にまで引き上げられています。

昨年の豪雨で被災した農家の方は、「被災農業者向け」ではないため、融資を受ける

ことを前提に、事業の拡大や合理化などの事業計画を提出し、その成果を求められることになっています。「復旧に向けて、くじけそうになりながら精いっぱい頑張っているところに事業の拡大とか効率化とか6次化などといわれても、逆に気力を失ってしまう」と寄り添って支援したJAの方もおっしゃっていました。県も事業の申請に当たって簡素化などの支援を行ったと聞いておりますが、 私はこうした被災者を追い込むようなやり方に、怒りを感じます。被災した農家には無条件に、「被災農業者向け」の制度が適用されるべきです。ぜひ国に求めていただきたいと思います。

 

さらには、熊本地震の際には適用された商工業者のための「グループ補助金」制度も昨年は適用されず、熊本地震では公費で行われた「半壊家屋の解体」も朝倉・東峰では行われず、被災自治体に大変な負担をかけました。

このように災害の規模によって、被災者支援策の多くに線引きがあり、どの制度も受けられない、あるいは負担を強いられるというのは、あまりに理不尽ではないでしょうか。家を失い、家族を失い、田畑を失った被災者の苦しみ、悲しみに違いはなく、今後、被災者向けの施策については、災害の規模によらず、平等柔軟に対応するよう、国に対して強く要求すべきだと考えます。この件に関し、県の見解を伺いたいと思いますが、総括してお答えできる部署がないということですので、代表して「被災者生活再建支援制度」について、福祉総務課長のご答弁をお願いします。

 

野上明倫 福祉総務課長

 

 同一の災害で被害を受けても、市町村ごとの被害世帯数によっては、法が適用されない場合がございます。半壊世帯や一部損壊世帯には支援金が支給されません。現行の支給額では、住宅の再建には不十分であるといった課題がございます。

 このため、県では制度の見直し向けて県議会とともに繰り返し、国に要望するとともに、全国知事会を通じて働きかけを行ってまいりました。

 全国知事会では、これらの課題の解決に向け、現在、国への提言案を検討するためのワーキンググループが設置され、自助・共助・公助のバランスを踏まえたうえで支給対象の範囲、支給額、見直しに伴う財政負担のあり方について検討されております。

 県では、被災された方々に寄り添った見直しが行われるよう、県議会とともに、引き続き国に働きかけを行っていくとともに、全国知事会に対して本県の意見を伝えてまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

災害そのものの規模は小さくても、被災者が受けた被害には違いはありません。大規模災害復興法や改正災害対策法には、基本理念の一つとして「被災者一人一人の生活再建」が盛り込まれました。これに照らせば、災害規模の大小で適用対象の線引きをすることは不適切だと考えます。被災者の実情を直視し、実態にあった制度へ見直すよう、国に求めていただくように重ねてお願いいたします。

 

次に、本議会一般質問で山口律子議員が取り上げました「人工がけ」に対する対応について、伺います。 

先日の知事答弁は「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」の対象が「自然がけ」に限られているから、人工がけは対象にならない、という法律を説明するだけのものでした。しかし、この問題は、安全安心のまちづくりを進める上でも、防災・減災対策の観点からも避けて通れないものです。

例えば、これは小倉南区湯川2丁目です。足立山のふもとが造成され、急な坂道に家が立ち並んだその一番奥、山を支えていたコンクリート壁が崩れました。当初、道路いっぱいにがれきが広がったわけですが、それを市が一か所に集め、今もそのままの状態です。壁が崩れたため支えを失って、少し上の山に亀裂が入っています。周辺住民は、亀裂がはいったところから土砂が崩れれば、甚大な被害となるため、雨が降るたびに気が気ではないと言っておられます。北九州県土整備事務所に直接見ていただきましたが、「制度上、どうすることもできない。しかし、このままでは危険だ。」と、そして同様の場所はいくつもあるとも言われました。この写真のすぐ下に家があり100軒。近くの家が並んでいます。改めてお聞きしますが、人口がけが崩壊したところを放置していれば危険ですね。所有者に資力がなく、復旧工事ができない場合、どうすればよいとお考えですか。

 

野上嘉久 砂防課長

 

県や市町村が実施する災害復旧事業対象となるのは、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」により、がけ崩れ箇所が「自然がけ」に限られております。このため、宅地造成や切土、盛土などにより形成された、いわゆる「人工がけ」については、その行為者の責任において対策することとなります。

なお、今回の豪雨を受け、災害復旧事業の採択要件の対象となる「自然がけ」におけるがけ崩れ箇所については、県、市町村で連携し、しっかり、土砂災害対策に取り組んでまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

つまり、前回知事答弁と同じく人工がけについては、原因をつくった者の責任だから公的支援はできないということですね。第一義的には原因者の責任であることはいうまでもありません。しかし、原因者が特定できなかったり、資力がなかったりする場合は、どうなるのか、ということなんです。

今年、大阪地震でのブロック塀の倒壊により、幼い命が奪われ、その後、危険ブロック塀の撤去のための予算がつけられました。また、「がけ地近接等危険住宅移転事業」は、がけ崩れなどの危険がある区域内にある既存の住宅を除去し、安全な場所へ移転する住民に対し移転費用などの補助を行う事業ですが、いずれも危険除去のため、人工構造物に対して行為者へ、原因をつくった者への公的支援を行う制度です。

それならば、多くの住宅を危険な中に放置するのでなく、人工がけについても、公的支援の対象、「急傾斜地崩壊防止」事業の対象とすべきではないでしょうか。ぜひ検討していただくよう、要望しておきます。

 

先ほど述べましたように、災害の規模によって国の支援が異なる不条理を、昨年の朝倉地方の被災者支援で具体的に指摘してきました。

被災直後の昨年の9月議会で、本県独自の災害基金の創設の問題について質しました。その際、中越地震において、新潟県が国の支援によって3000億円の基金を設置し、その運用利子を利用して毎年60億円の予算を10年間にわたって措置し、国にない県独自の様々な支援策を採用して、災害復旧・復興に大きく役立った事例を紹介しました。

また、昨年の質問では触れませんでしたが、本県でも県内すべての市町村の参加で「福岡県市町村災害共済組合」を1973年(昭和48年)に設立し、被災自治体が災害復旧・復興のため、自ら積み立てた基金を自由に取り崩して使えるようにできることや、地方債を起こすときには、その融資にあてることができる共済組合を、2013年(平成25年)まで持っていました。この共済組合は、災害という非常時に備えた県内市町村の共済組合でしたが、解散時には158億円という基金を持っていました。

本県の場合数年に一度どころか、昨年、今年と連続して大規模な災害が発生しています。被災者に寄り添い、国の支援に乗らないが被災住民と自治体にとって必要不可欠な災害支援が柔軟に行えるよう、県内すべての市町村と共同してなんらかの基金創設が必要ではないでしょうか。県の見解を伺います。

 

後藤和孝 財政課長

 

 災害発生時、避難所の設置や仮設住宅の供与など応急的に必要な救助の財源に充てるための現行制度として、各都道府県は、災害救助法に基づき災害救助基金を設置しております。

 また、災害復旧・復興対策に伴う財政需要につきましては、国庫補助金や地方財政措置などを活用し、対応することとしております。

 さらに本県では、大規模災害など不測の事態に備えて財政調整基金を設置しております。被災者への柔軟な支援など災害の復旧・復興に係る対策の実施におきまして、財源不足が生じた場合にはこれを活用することとしており、今後とも財政運用営に支障がないよう努めてまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

いま、昨年の答弁同様、災害救助基金と財政調整基金が設置されているので、これを活用するとのお答がありました。

ご答弁にもありましたが、災害救助基金は災害救助法に基づいて、全都道府県に一定の基金を持つことを国が義務付け、その使用についてもあくまでも被災直後の初動の救援資金に充てると、細かくその使途が明記されております。また、財政調整基金ですけれども、平成29年度末の基金残高は、111億円余ですし、本県の場合、財調はしばしば、景気の変動などによる収入不足を補う財源として活用されており、度重なる甚大な被災状況と高齢化が進んで被災住民に自力復興の体力がない現状を考えるとき、多様な公的支援が必要であり、それを支える安定的な財源が求められているのではないでしょうか。

全国のいくつかの県で、県独自の基金の創設が徐々に広がっていますが、本県でも検討していただきますよう、重ねて要望して質問を終わります。

 

以上

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